19-20世紀の美術運動 その8 ハイブリディティー

その8 ハイブリディティー

ハイブリディティーとは「混成性」。支配/被支配など、複数の文化の混在状況における政治的な力学やバランスの総称。 1990年代を迎えると同時に訪れた米ソ冷戦構造の崩壊は、美術の世界の力関係にも根本的な変化をもたらし、 多くの第三世界出身のアーティストが国際舞台に登場することとなった。 この急激な変化は、しばしばモダニズムの規範の崩壊と結びつけて語られ、またそれと並行して土着的な価値観と西洋的 な価値観とが混ざり合ったハイブリディティの成立をも強調することになった。 だがこのハイブリディティは、植民地支配の合間に繰り広げられる、植民者と被植民者との間の不断の対話を通じて 初めて生成するものであり、その意味では単なるエキゾチズムへと陥ることの多い皮相なマルチカルチャリズムとは 理論上区別して考えられねばならない。 美術においても、「大地の魔術師たち」展を契機として関心の高まった「ハイブリディティ」への関心は、その後多くの 国際展などによる検証を経て、ようやくその生成のプロセスにまで踏み込もうとしているのが現状である。 異種混交性。異質な要素が交じり合いながら存在していること。ハイブリッドという言葉そのものは生物学、電子工学、 情報科学をはじめとする様々な学問分野に見ることができる。 芸術を含む広義のの文化現象におけるハイブリディティーが問題とされるとき、そこで想定されているのは複数の言語 や慣習によって構成される個人や社会の存在である。 20世紀後半に加速化した文化や経済のグローバル化によって、人々の居住地や文化的なルーツはかってなく流動化 しつつある。それに伴いハイブリディティーという存在がますます多くの注目を集めるようになっている。