静物画の描き方 その1 制作手順の一例(1)

パネル作り  シナ合板でパネルを作り、亜麻の生地キャンバスを膠液でのり付けして、支持体とする。 生地キャンバスとはまだ地塗りや膠引きがされていない状態の画布のことです。 例えばクレサンの亜麻生地キャンバス麻、中細目    ホルベインの板絵用麻布    膠はホルベインの専門家用顔料#180 市販のキャンバスの既に下地処理がされているものでもかまいません。細目がいいでしょう。 しかし地塗りをしっかり行っておく必要があります。

地塗り パネルに白亜の地塗りを行います。 白亜はホルベイン又はマツダのムードン(下地用)、及びムードン(仕上げ用)とチタニューム ホワイトを膠液に混ぜ、冷やした後にサンシックリンシードオイルを加えて攪拌して、これを塗布 します。 下塗り 地塗りがよく乾燥してから、例えばイエローオーカーなどで全体をぬります。 溶き油はテレピンで薄く溶いたリンシードを使用します。 素描(デッサン) 油絵具のアンバーか木炭を使って、素描を行います。 鉛筆ですと、濃い線が完成後、目立ってしまう場合があり好ましくありません。 油絵具で引いた線は、すぐに布でぬぐえば取れますので描き直しが容易です。 構図取りは非常に大切な工程ですので、しっかり構想を練ったものを描きましょう。

静物画の描き方 その1 制作手順の一例(2)

荒描き 素描が乾いたら、例えばシェンナやアンバーで大きな陰影をつけます。 溶き油はサンシックンドリンシードオイルをテレピンで薄く希釈して使用します。 次は太い筆で大まかな色を塗っていきます。 筆は豚毛の丸筆だいいでしょう。 溶き油はテレピンの量を徐徐に減らして、乾性油を多めにしていきます。 できれば2-3種類の溶き油の配合したものを準備しておくといいでしょう。 荒描き 次は全体的に固有色で塗りわけましょう。 陰影などを付けながら、徐徐に細かな部分を描いていきます。 1回や2回塗った暗いではなかなか感じがでてこないので、繰り返し塗り重ねていきます。 明るい部分、暗い部分、あるいはハイライトを入れていきます。   最終的には個々のモチーフを描写するのに豚毛の他にもマングース毛も使用するといいでしょう。

これはあくまでも一例にすぎません。 基本的には絵を描くのにマニュアルというものはありません。 絵を見て感銘を受けるということは、その作者のものの見方、感じ方、表現など、これまでにない 経験しなかったようなもの、何かを受け取るからです。 制作手順にしても、当初は教則本などに頼りますが、次回からは自分に合った、好きな描き方を 見つける旅に出かけなくてはなりません。

静物画の描き方 その2 静物画の大事なこと

絵画の中で静物画は代表的なものとして見られます。
静物画は大事なのは静物画の中に描かれているモノを見るだけでなく、そのモノとモノの間の
空間を見ることです。
つまり、奥行き、床に傾きを見ることである。これは人物画と違って静物画は特に大事にして
いかねばならないことです。
静物画に奥行きや、立体感を持たせるにはやはり、スクリーンに入るモノをしっかり描くこと
そしてそのモノの影をしっかり描くことです。
それが描けてから、奥行きや立体感まで感じられるレベルまで成長する。
油絵としての静物画は具象画や抽象画など、様々な分野に分かれるが、この際の具象画で重要
なことは、どこまで色味が見えるか、その色味を表現できるかです。
具象画ではデッサンと同じく、奥行きも大切だが、その場の雰囲気を表すことも大事である。
どこにどのような色を置くかによって、全体の雰囲気が違ってくる。色を選ぶときは慎重に
選ばなければならない。
形は抽象画の場合、簡素化するだけでなく変形したり、独自の見方によって想像もつかないような
形になることもある。
その際はモノから感じることが重要視される。
つまり感受性がもっとも必要とされる。
合わせてバランスも全体的な雰囲気作りを担っている。
それが作者の作風に繋がっていく。

静物画の描き方 その3 静物を描く(例1)

フランス人形と陶器
静物は、じっくりマイペースで制作を進めることができるので初心者に最適です。
複数のモチーフを組み合わせて描いてみましょう。モチーフが多いと描くのが大変だと思うかも
しれませんが、画面のバランスを整えたり、コントラストを生み出す際に、ある程度選択肢が多い
方が組み立てやすくなります。
モチーフは気に入ったものを使えばいのですが、形や色、大きさなどに変化があるものを組み合わせる
と、構成の選択肢が増えます。
モチーフを置く場所は、モチーフに当たる光が一定で、モチーフの物質感などを観察するのに適した
場所を選びます。直射日光があたるなど、光源の不安定な場所は避けましょう。
どんな複雑なモチーフも、目を細めて見れば、いくつかのグループとして把握できます。大切なことは
モチーフ全体を眺めて、どこを鮮やかにして、どのような仕上がりにもっていきたいかを、頭の中に
描いてから制作にとりかかることです。
キャンバスには事前に中間色で地塗りをしておくと、重ねる色との割合により、明暗だけでなく色味
が生まれ、色を作っていくきっかけになります。
これはモノトーンのグリザイユに対し、カマイユと呼ばれています。
モチーフの組み方は主役を真ん中に、背の高いものは後に、小さいものは手前にが基本です。
光の方向も考えながら左右のバランス、各々の部品が主張する色のバランス、遠近感などを勘案しながら
時間をかけて配置作りをしましょう。

静物画の描き方 その4 静物を描く(例2)

フランス人形と陶器
1、アングルを決めます。両手でワクを作って構図をイメージし、中心に何がくるかを頭に入れます。
2、構図を決める。指をスケールかわりにして、モチーフが画面に収まった状態うぃイメージする。
3、キャンバスに濃い目のブルーグレーでモチーフの位置と関係、形をおおまかに描いていきます。
4、背景の布地やモチーフの影など、画面全体の中で暗い部分からブルーグレーで塗ります。
5、明るい部分は布で絵具を拭き取るように描いていきます。
6、構図を修正する。画面全体のバランスが見えたこの時点で絵具が乾かないうちに、納得がいくまで
形や構図を修正します。
7、固有色を塗る。それぞれのモチーフに固有色を塗っていきます。いきなり明るい色を塗らず、影側
の色をイメージして広めに塗ります。
8、背景の色を混ぜたグレーでモチーフ全体の影を繋いでいきます。
9、静物は特に足元の位置関係が大切です。輪郭をしっかり取りましょう。
10、人間の眼は、色と形が同時に見えません。色を塗るときは広めに塗り、形は背景の色で絞り込む
ように塗るつぶしながら決めていきます。
11、細部を描き始めます。まずは全体のバランスをチェックしながら主役から描きます。
12、ブルーの濃い目のワインのビンはピリジャンとウルトラマリンを濃い目に溶いて、グレーズする
ことで透明感が表現されます。
13、すべての物が、それを見る距離によって違って見えています。手元で描いた1筆が離れて見た時
に効果があるかどうか、離れて眺める時間を持ちましょう。
14、全体をチェックする。自分の絵に眼がだいぶ慣れてしまう頃です。絵を逆さまににして離れて
眺め、不自然なところがないかチェックします。
15、全体を描き進めていく途中で主役が負けてしまわないよう、時々手をいれます。
16、モチーフを描きこんでいきます。
17、全体にハイライトを入れます。ハイライトは面積を絞り込むほど効果があります。
18、仕上げ。顔などの細かい部分を描くときは腕枕を使うと筆先が安定します。

静物画の描き方 その5 静物画の遠近感

モチーフをいくつかの部品で構成する場合、目線の高さが問題となります。
静物画の中には見下ろした視点で描かれた絵が数多く見られます。
その原因は色々でしょう。モチーフを置いたテーブルの高さ、と自分の座っているイスの高さと
両者の距離によって、たまたまそういう目線になってしまった。
また、モチーフをしっかり見ようとして、つい、体を乗り出して覗き込んだようになってしまった。
低い目線で見たにもかかわらず、形を間違えて上から見下ろすような形に描いてしまった。
理由はいろいろですが、静物を描こうとモチーフをテーブルに並べる時に、目の高さも意識して
いつもより低い視点から描くことを体験してみてください。
上から見下ろすと、モチーフはよく見えますから、それぞれをしっかり描こうとする人は都合の
良い配置です。
しかしそれだけモチーフがバラバラに点在した格好にになってしまい、構図的な繋がりを欠き、個個
のモチーフを説明しただけの絵になり易い。
目線を下げますとモチーフ同士が重なり合う場合があります。
しかしモチーフとモチーフのつながりが出てきて、形が連携してきます。
モチーフ間の前後関係も感じ取ることもできます。
静物画も風景画と同じように遠近感が大事です。

静物画の描き方 その6 静物画の基本は三角構図

静物画といえば、一般的にセザンヌでしょうか。オランダの静物画、フランスのシャルダン、マチス もいい、ピカソもいい静物画があります。 静物画はもともと豊作を表すのでしょうか、獲物や収穫物が描かれてきました。 西洋の静物画は鳥やウサギの死骸や肉が生々しく描かれています。 その点、東洋の静物画は花や、野菜、果物がほとんどで、やはり日本人は東洋の絵のほうが向いている。

静物画を描く場合も風景画と全く同じです。 横軸が肝心で、背景と舞台。この舞台の上に色々なものがあるあるという構造を捉えることが大切です。 風景のように上から見るように描く方が、見る人に新鮮に映るでしょう。 次は構図、構図はとにかく三角構図、これが基本です。 まず安定していて、その中に流れがあるように作ります。 静物画はモチーフを置く、最初のレイアウトがすごく重要です。 これもピラミッドに置けばいいわけですから、そんなに悩むことはありません。 たくさん描かなければ話になりません。 そして感動です。描く喜び。 この感動と喜びの前に上手い、下手もありません。 この気持さえ忘れなければ、全ての絵画は美しい。 反対に、感動もない、喜びもない、ただ上手いだけの絵は不要です。

静物画の描き方 その7 セザンヌは静物画が得意だった

ポールセザンヌは印象派ではありますが、そのまま情景を描いたわけではありません。
自然の中に幾何学を見つけ出し、それを表現しようと追求していた画家でした。
特にセザンヌが得意とした絵画は静物画で、独特な手法を取り入れています。
長方形の筆使い
セザンヌの絵画の特徴に筆使いがあります。色を塗っている部分を良く見ると、ひとつひとつの筆
使いが長方形に近い形で塗られています。
その長方形を並べて建物や、木が構成されています。
このように長方形に描くことで、絵に統一感を出しています。
幾何学的な構成
自然の中に幾何学的な配置を見付け出そうとしたセザンヌの手法は描かれているものの配置は
かなり計算されています。
セザンヌが近代絵画の父と呼ばれている理由の1つがこの構成方法なのです。
描かれているものの配置はパッと見ただけではわかりにくいですが、丸、三角、円錐、円柱になるよう
丁寧に配置されているのです。
この幾何学的な構成は20世紀になってピカソにも強く影響を与えました。
リンゴと山
セザンヌはリンゴと山の絵を多く描いています。
特にリンゴはひんぱんに題材にもなっていて、60点以上もの絵として残っています。
また、山の絵は晩年に多く描かれていて、こちらも40点以上、絵が残っています。
リンゴも山も平面的に見える色の塗り方が色によって、わずかな立体感を出しています。