19-20世紀の美術運動 その6 オートマティズム

その6 オートマティズム

オートマティズムとは心理学用語で自動筆記、自動記述という意味。あたかも何か別の存在に憑依(物の怪が 乗り移る)されて肉体を支配されているかのように、自分の意識とは無関係に動作を行ってしまう現象。 例えば、霊媒や、予言者などと呼ばれる人々は死者の霊が下りて来た、とか体を乗っ取られている、などの 理由により、無意識にペんを動かしたり、語り始めたりする。これは神霊などがこの世界に接触を図る方法 として説明されている。 日本では神がかり、お筆先とも呼ばれた。 第1次世界大戦後、フランスの詩人でダダイスト(1910年半ばの芸術思想)でもあったアンドレブルトン はダダイズムと決別して精神分析などを取り入れ、新たな芸術運動を展開しようとした。 彼は1924年シュルレアリスム宣言の起草によってシュルレアリスム(超現実主義)を創始したが、 彼が宣言前後から行っていた試作の実験がオートマティズム(自動記述)と呼ばれている。 これは眠りながらの口述や、常軌を逸した高速で文章を書く実験だった。 半ば眠って意識の朦朧とした状態や、内容は二の次で時間内に原稿用紙を単語で埋めるという過酷な状態の 中で、美意識や倫理といったような意識が邪魔しない意外な文章が出来上がった。 無意識や意識下の世界を反映して出来上がった文や詩から、自分たちの過ごす現実の裏側や内側にあると 定義されたより過剰な現実「超現実」が表現でき、自分たちの現実を見直すことができる、というもの。