油絵の技法 その17 グリザイユとカマイユ

グリザイユは白黒の明暗で描く方法です。
このまま作品とするより油絵具で彩色するための下塗りとして使います。
一般的な色はシルバーホワイトとピーチブラックにより明暗を作ります。
一方カマイユは褐色の明暗で描く方法です。
これもこのまま作品とするより、油絵具で彩色するための下塗りとして使うと効果的です。
一般的な色はシルバーホワイトとイエローオーカーとバーントシェンナにより明暗を
作ります。
いずれの技法もモノクロやセピアの写真のようにモノトーンの画面が作れます。
油絵の下層描きにこの技法を応用すると、フォルムと色彩に分業された画面構築をすることができます。
つまりグリザイユやカマイユで光と形を表現して、その後、着彩して色彩を表現します。
形象と色彩を一度に表現するのは難しいものですが、この技法を使えば、まず色彩に
とらわれず、描きこんだ後に今度は色に集中して描くことができます。
下層のトーンが上層の色彩に微妙な変化を与えますので、混色をあまりしなくても
複雑なニュアンスを生み出すことができます。
色の表現に悩んでいる人にはおすすめです。
カマイユは有色の下地の上に単色の明暗の調子だけで描いた絵です。イタリア語のカメオと同じ語源を持ち、カマイユは単色画の総称です。
グリザイユもカマイユの一種と言われています。

油絵の技法 その16 ウエットインウエット

絵具が乾く前に、つまり濡れている状態で塗り重ねる技法をウエットインウエットと言います。
これは絵具の層と層に隔絶せづに1体化した構造断面となるため、塗膜形成機構は安定に保たれ
ます。
この技法はすばやく行わなければならず、漫然と塗り重ねを続けていると表面と内面の乾燥機構
にひづみが生じることになります。
下の絵具が乾いてから塗り重ねるのはウエットオンドライです。
こちらは溶き油の配合や塗り重ねる絵具層の厚さによって重ねるベストタイミングは変化します。
また堅牢性の程度にも影響します。
油絵の他、水彩やアクリルなどで、最初の絵具の上に同色又は別の色の絵具を加えると両者が
自然と混じりあい、特に水彩ではウオッシュの濡れ具合や重ねる絵具の色合いを試してみて
コントロールすることで複雑なにじみ効果が得られる。
日本画のたらし込みや、水墨画の破墨も同様な技法です。
この技法はボブロス画法とも言われています。
1900年代中頃以降にアメリカのボブロスという画家が考案しました。
しかしこの画法の基礎は中性からすでにあり、ボブロスはこの画法をより発展させて独自の
画法を編み出しました。
ようはこれもにじみやぼかしの技法です。
乾いてない絵具の層の上に別の層の色を塗り重ねると伸びやかで自然な色の融合が見られます。
下層の色は独創性を保ちながらも新たな色の深みや新鮮さを与えます。
彫刻的な表現や動きを出したいときに使用します。

油絵の技法 その15 スグラックフィート トッキング テクスチャー

スグラックフィート
半乾きの油絵具の上から筆の反対側の柄の部分を持って、絵具をこそぎ落とす方法。
トッキング
半乾きの油絵具の上に新聞紙をのせて余分な絵具を落とす方法。
テクスチャー
主に下塗りの段階で使われる技法で、画面の質感のこと。
絵具の中に貝の粉や、砂などを混ぜて描くこともテクスチャーである。
一般的な質感とは、金属質、ガラス質、布や紙質などの言い方もできる。
いわゆる、物の表面の質感、手触りなどを示す概念である。
本来は織物の質感を表す言葉です。
油絵では絵を描くときにキャンバスにあらかじめ下塗りの色を塗っておくことがあります。
これを地塗りとか下塗りといいます。
この下塗りの効果は絵を描く上で色々な目的がありますが、その上に載せられる絵具の発色
をよくしたり、色々なマチエール(絵肌、タッチ)やここでいうテクスチャー(質感)を
楽しんだり、色合いの奥深さを出したい、という効果が得られます。これが下塗りの目的です。
マチエールとテクスチャーの区分は難しいですが、マチエールでは絵具の筆やナイフによる
痕跡、キャンバスの布目の凸凹のことを言いますが、これにテクスチャーの質感を含めて
マチエールと言った方が分かりやすい。

油絵の技法 その14 点描3

現在、日本で活躍する点描画家の1人を紹介します。
日展評議員、一水会運営委員 鈴木順一(72)さんです。
国内で点描を用いる画家は多くはないが、鈴木さんは点描一筋。
1961年の一水会展の初入選作品は半点描といえる作品で、逆光の波のきらめきや
魚を入れる籠の表現に点描風のタッチを取り入れています。
その後、シニャックの色彩、光学理論の書籍や画集を取り寄せ、本格的に挑戦。
1973年からは芸術院会員の高田誠さん(1913-92)に師事。
1986年に日展特選。
50年以上に亘り、主に自宅近くの愛知県師崎や豊浜などの漁港や海の風景を点描で
描いてきました。
鈴木さんの描き方は最初は粗く、だんだん細かく。3回ほど下地を塗った後、まず輪郭を
取るように点を置く、さらに画面全体に点を加えていく。
何千回、何万回と気の遠くなるような作業が続く。
点描というと、点を置くという動作に目が行きがちだが、ポイントは色にある。
絵具は混ぜると色が濁る、点描は混色しないで、原色を押し付けるように置いていく。
絵具はチューブから出したほぼそのままの状態。
色ごとに筆も替える。100号以上になると細い筆を40-50本使うという。
色は全体でも基本的に5-6色しか使っていない、そうすることで絵全体に光が溶け込む
感じになる。
作品は色とりどりに見えるが、網膜の中で色が混じりあって効果を生み出している。
と、解説している。

油絵の技法 その14 点描2

点描は1880年代半ばころ、フランスのスーラによって確立されています。
点描はファンゴッホをはじめ多くの画家たちに影響を与え、やがて抽象絵画への流れも
出来上がっていきました。
モネやシスレー、ピサロら印象派の画家たちは移り変わる自然の様子を細いタッチで
捉えていく等触分割を特徴としました。
そこには混色しない純粋な色を使うことで、キャンバスをより鮮やかに見せるテクニック
がありました。
1886年の第8回印象派展でスーラとシニャックは新印象派と名付けられました。
当時最新の視覚と色彩の理論を取り入れたスーラは純粋な色の点をキャンバスに置いていく
ことによって澄んだ色彩と光の表現を手に入れました。
シニャックは若くして夭折したスーラに代わって新印象派の理論化に努め、世代を超えて
多くの画家たちに影響を与えました。
2人にとって点描は調和を実現する技法でした。
1886年オランダからパリにやってきたファンゴッホはそこでスーラやシニャックの
点描作品を目にしました。
彼は点で描くそのものよりも、そこで用いられた補色の効果に魅了されました。
そうした色彩の力を最大限に活かす方法として、ゴッホは独自に点描技法を生み出して
いきました。
その後、点描はフランスからヨーロッパ全土に伝播していきました。
ベルギーやオランダではファンレイセルベルヘ、バンドベルドトーロップが点描を取り入れ
ました。
三原色と黒い線による抽象絵画で知られるモンドリアン。
彼もまた、1900年代初めにトーロップとの交流を通じて新印象派の理論に触れています。
それがきっかけとなって色彩の純粋性を追求することになった。

油絵の技法 その14 点描(ドライペイント)

絵具を細目の筆先に盛り付けて塗るというよりは置く感じで厚めに載せます。
絵具は混色した後、重なった顔料同士が光を奪い合い極端に明るさを失ってしまうことから、
色を混ぜずに画面に並べ、見る人の網膜で混色するように考えられた技法です。
日本で最初にこの技法を取り入れた画家は岡鹿之助です。
鹿之助は自分の絵のマチエールが西洋絵画のマチエールに比べると劣ることに悩み、試行錯誤
の結果、到達したのが、彼の画風を特徴づける点描画法であった。
西洋近代絵画史において、点描画法を用いる代表的な画家はジェルジェスーラであるが、
当時の鹿之助はそのころまで無名であったスーラの作品は知らなかった。
スーラの点描はキャンバス上に並置された異なった色の2つの点が見る人の網膜上で混合して
別な色を生み出す、という視覚混合の理論を応用したものであった。のに対して、
鹿之助の点描はむしろ同系色の点を並置することによって、堅固なマチエールを達成しようと
するものである。
鹿之助はこの技法を用いて静けさに満ちた幻想的な風景画(雪景色が多い)を多く残した。
岡鹿之助は1898年生まれ、1919年東京美術学校西洋画科入学、
1964年芸術院会員、1972年文化勲章授与、1978年没 享年79歳。

油絵の技法 その13 グレージング(グレーズ)

一種のボカシ画法です。
油絵具の透明感を生かした技法で、透明水彩の色作りと同じです。
色相の異なる色をグレーズすれば混色と同じように色味が変わります。
黄色に青をかければ黄緑になる。
類似色をグレーズすれば色が深くなる。
オレンジの上に赤であれば鮮やかな深紅色になります。
下の色を透けさせて視覚的に混色するわけですから、後からの色はごく薄くして
透明度を高くしておきます。
下の色が乾いてから塗ることが一番のポイントです。
注意しなくてはならないことは、
グレーズの色面をマチエールの異なる画面上のポイントとして残したい場合を除いて
グレーズした部分をそのままにしておかないことです。
周りの絵具との境目を軟毛の筆で馴染ませたり部分的に描き込んで仕上げることが
必要です。
進め方のポイントはどんな色調に仕上げるか、完成の色のイメージをあらかじめ持つ
ことが必要です。
グレーズを繰り返せば色調は濃くなっていくわけですから、鮮やかに濃くしたいのか、
渋く濃くしたいのか、下の画面の色味も違ってくるし、グレーズする絵具の色も違います。
特に明るい部分はグレーズで明るめにしておいて、最終的にグレーズで明暗のバランスを
とっていくことがポイントです。

油絵の技法 その12 着色グラウンド タッピング インパスト

着色グラウンド
キャンバスに下地の色を塗って、下地の色を残しながら描く技法。
タッピング
スポンジや筆以外の物に絵具を付けてタップしながら描く方法。
又は、絵具をたくさん作り、筆に油を少量付けて、叩いて、ぼかしを作る技法。
部分的にタッピングして複雑な効果をねらいます。
インパスト
厚塗りのことです。絵具を油で薄めないで、厚く盛り上げるように塗る方法です。
力強くはっきりした色が出ます。
油絵の画法の中では代表的な技法です。
厚塗りですが、筆で描く方法とナイフで描く方法とがあります。印象がかなり異なります。
14-15世紀の油絵は薄塗りで色を重ねていく技法が中心であった。
19世紀頃から絵具のチューブが商品化して色数が増加して、厚塗りが積極的に行われるように
なった。
グルーズ(薄塗り)やスタンブル(ぼかし)に対する言葉である。
インパストの効果として、タッチの凸凹が浮き上がり、レリーフ状の効果を出す。
タッチの流れが画面の構成や空間をイメージさせる。
ゴッホのひまわりのある静物は樹脂の多いとき油を使い、粘りの強いタッチで描いている。
インパストの問題点は亀裂と皺が出易いことである。
揮発性油、シッカチフの多用、未乾燥下での重ね描きはしないことが必要です。

油絵の技法 その11 アラプリマ

アラプリマはイタリア語です。
あらかじめ作られた下地の上に透明な絵具を何層も塗り重ねて仕上げていく古典的な、
伝統的な方法と異なり、油絵具を地塗りなしに直接画面に塗りこんでいく方法をアラプリマと
言います。
画家が自由に色を画面に置いていく方法で筆のタッチや絵具の盛り上がりなどを画面効果として
生かす方法です。
絵画に自然らしさを求めた印象派の画家が採用した19世紀後半から筆も柔らかいものから
硬い豚毛の太筆が使用されるようになった。
1983年から1994年にかけてのアメリカBBSテレビの番組ポブの絵画教室は稀有な
長寿番組であった。このポブ(ポブロス)は古典的なアラプリマ画法を改良を重ねて、
ポブロス画法という画法を考案した。
未乾燥の塗膜に描写する方法やぼかし込みの多用、油分の多い絵具を下塗りすることによって
短時間に仕上げることができるようにした。
筆やナイフの特徴的な使用により今まで描いたことがない人でも油絵が描けるようにした
ポブロスの功績は大きい。
ポブの絵画教室は日本でも1990年後半からNHK-BSで放送され人気を集めた。他にも
メキシコ、韓国、台湾、イギリス、ドイツ、オランダ、トルコのテレビでも放送された。
現在普及しているアクリル絵具のジェッソを下塗りに使った方法はロスの考案である。

油絵の技法 その10 ドライブラシ

ドライブラシとは絵具をそのままか、硬めに溶いたものを筆につけ、キャンバスに塗ったり、
こすりつけたりすることによって、かすれの効果を得る方法。
普段、絵を描く時は常に絵具を十分含ませて描きますが、一旦筆に含ませた絵具をパレットや
紙の上でほとんど拭き取ってしまい、筆に残った生乾きの絵具をこすりつけるように描くのが
ドライブラシです。
絵具が筆に十分付いていませんから、その状態で描くと筆が乾き、線がかすれたようになります。
わざとこういう効果を狙ってデッサンのようなタッチを生み出す技法です。
又、不均衡に塗った乾き気味の絵具の隙間から下層をまばらに見せる技法とも言えます。
方法も色々ありますが、乾いた硬めの筆に溶き油をほとんど加えない絵具を取り、軽く布で
ぬぐってから、乾いた層の上を軽くこするように塗ります。筋状の跡を残すには、力を抜いて
筆の下方を持ち、親指で毛を押さえるようにするとうまくできます。
この独特な技法のドライブラシはアメリカのアンドリューワイエスによって考案され、
他にもEシーレも多用していますが、ワイエスのそれはマイクロハッチングのような繊細で
緻密です。
日本国内にもワイエスを尊敬する画家が多くいて、たくさんの美術館がワイエスの作品を収蔵
しています。
ワイエスはアメリカの勲章をほとんど授与されているのでは、と思われるくらいの巨匠です。

油絵の技法 その9 ドリッピング

吹流しの意味です。
絵具を画用紙にたらして、ストローや直接息で吹くと美しい線の模様ができます。
これをドリッピングといいます。
パレットに載せた絵具を筆の水で溶いて、ぽたぽた落ちるくらいから、それよりもっと薄くてもよい、
強く吹きたいなら濃い目に、ゆっくり吹き流したいなら薄めにする。
たらした絵具の真上からぷっと吹けば花のように散り、追いかけるように吹くとおもしろい図案が
できます。
画家のジャクソンポロックは床に広げた支持体に筆やスティックに付着させた液状の顔料を飛散させて
絵を描きました。
この技法通常な絵画のように筆と支持体とが直接触れ合うことはなく、手首のスナップや腕のスイング
を動かせ、顔料が空中に放たれるように支持体に定着します。
顔料のはね散らし、滴たらせ、あるいは流し込む、ということでドリッピング又はポーリングとも
いいます。
ジャクソンポロックはこの技法に際して、エナメルやアルミニューム塗料などの商業用の塗料も使い
絵具の粘性などの各顔料の特性を意識して活用した。
ドリッピング技法は偶然を使用した手法なので、筆で描く手法と違って誰がやってもそこそこに
支持体に表現できる。
かなり乱暴ですが、小学生の作品だって物理的な表面と奥行きの不可思議はそこそこ生み出すことは
できる。
ポロックの絵画は表層的な抽象表現主義を標榜してアメリカの抽象画の文脈に収まっている作品である。
小学生の限らず、他の画家が絶対真似できない境地の画法である。

油絵の技法 その8 コラージュ

コラージュとは貼り付けの意味です(フランス語)
絵具を塗る代わりに色の付いた紙を貼って絵を作ることをパピエコレといいます。
貼ったり、剥がしたり、移動させたり、が容易のため、構図の展開を空想したり、
エスキース作りに応用できます。
作品の構図を決めるときにも使います。
切り立った絵のパーツを紙の上で移動させたり、回転っせたりして最適な配置を考えるときに
よく使われます(エスキース)。
抽象画の世界でよく使われます。
天地や方向や遠近にこだわらず、自由に配置を変えていきます。
色と形のバランスやリズムに思考に専念できます。
絵画におけるコラージュはキュビズム時代にパブロピカソ、ジェルジュブラックらが始めた。
前記のパピエコレに端を発し、主観的構成を持たない、意想外の組み合わせとしてのコラージュ
は1919年Mエルンストが発案した。
主に新聞、布切れ、針金、ビーズなどの絵具以外の物を色々組み合わせて画面に貼り付ける
ことにより特殊効果を生み出すことができます。
現代でも様々な方向で工夫され発展して使われています。
フローラルコラージュという技法があります。
あらゆる植物の枝や葉っぱなどの植物素材を使って紙やキャンバスに張り付け、アート性を
追求する造形の1つの部門となっています。
デジタルコラージュという技法もあります。
パソコンのモニター上で写真素材を切り取ったり、縮小、拡大したりして、それを画面上で
貼り付けていき、イメージ作品を作る技法です。

油絵の技法 その7 フロッタージュ

木の枝とか、石とか、コインなどの表面が凹凸のある物の上に紙を置いて、上から鉛筆
などでこすると、その凸凹が模様となって現れます。
この模様によって描かれた作品をフロッタージュといいます。
使用する紙は比較的薄くて柔軟性のあるものがよく、画用紙などの厚みのあるものは
写しにくいので適さない。
古くから東洋では拓本という技法がありました。
乾拓と湿拓の2種類あります。
乾拓はフロッタージュと同じ原理で、和紙の上に擦りだし用の固形の墨でこすって凸凹を
写し取ります。
湿拓は水分を含ませた和紙の上からタンポでたたき、1度凸凹を浮かび上がらせてから
絵具の付いたタンポで凸面を絵具で彩色します。
魚拓がこれに似ています。
フロッタージュはできた模様は偶発性によるものです。
そこの現れるイメージは見る者の想像力を拡大させる効果があります。
シュルリアリズムのMエルンストが創始者と言われています。
パステル、クレヨン、鉛筆、色鉛筆などを使って凸凹をこすり、写し取ったり、紙を回転
させたり、移動させたりしてして写し取ると、思いもよらないような綺麗な模様が得られます。
マックスエルンストは1900年代のドイツの画家です。シュルレアリズム(超現実主義)の
代表的な画家です。フロッタージュ以外にもコラージュ、デコルコマニーなどの技法を考案
しています。

油絵の技法 その6 デカルコマニー

デカルコマニーとは合わせ絵のことです。フランス語で転写画の意味です。
紙に絵具を塗り付け、それを2つ折にしたり、別の紙に押し付けたりすることで、塗りつけた
絵具を絵具を転写する絵画技法です。
折り目を境に左右対称の絵柄が描けます。
デカルコマニーでは使用する紙や絵具などの素材特性が大きく表現効果に関わります。
紙には表面の平滑性や吸収性などが異なった様々な種類があり、それぞれ特徴のある転写効果を
出しますが、基本的には表面が比較的滑らかなケント紙やアート紙などが適しています。
元々は、紙に描いた絵を陶器やガラスに転写し、絵付けするための技法でしたが、画家の
オスカードミングスという人がこの技法を絵画作品に取り入れました。
この画法は制作者の意図とは関係なく偶発性に委ねられることが特徴です。
その偶発性や無意識により現れたイメージは見る人の想像力を駆り立てます。
抽象画の世界で使われる技法です。
画家のオスカードミンクスは1935年ころから始めたシュルレアリズム絵画の技法の1つ
としてこの技法を取り入れた。岩や、花、水、雪、溶岩などを思わせるイメージが現れ
その後のシュルレアリストたちによって盛んに使われるようになりました。
おもしろい使い方では、生き物は大体、左右対称です。例えば蝶も左右対称であることから
画用紙半分に絵具で模様を描き、真ん中を折って、しっかりこすります。
それを開きますときれいな蝶の図柄ができます。

油絵の技法 その5 マスキング

絵画の中では市販されているマスキングテープを使って、長い直線(曲線でも)を曲がらないで描きたい
ときや、シャープなエッジが欲しいときに使われます。
筆では描けない狭い直線を描く時には便利な技法です。
例えば、格子状の形が描きたいときは、下の地色を塗って、乾いてから任意の幅のテープで格子状に
一定の間隔で貼り付けます。
この状態でこの上に違う色を塗り重ねます。
そしてテープを剥がしますと格子状の模様が現れます。
建物や構造物の絵で強い調子の直線が欲しい場合もその直線部に所定の幅でテープを張り、その上から
色を塗り重ねて、テープを剥がせばシャープな線が得られます。
バイオリンやチェロなどの弦を描く時はこの方法がよく使われます。
しかし線が強すぎる場合は面相筆などで軽くその上からなぞりますと柔らかい感じとなります。
テープではなくマスキング液を使う方法もあります。
塗る、塗らない部分を曲線で分けたい、より細い線が欲しい場合に使われます。
マスキング液は合成ゴムをアンモニアで溶かした液体です。
乾くとゴム状になって後から簡単に剥がすことができます。
この技法は1920年ごろから使われるようになったと、との記録があります。
当初は図案や装丁などのグラフィックアートや工業製品のロゴマークを入れる塗装の方法として
使われていました。
現代絵画でも、ごく一般的な画法として普及しています。

油絵の技法 その4 クロスハッチング

ハッチングとは絵画や製図で使われる描画法の1つで複数の平行線を描きこむことです。
図面などで、この場所ですよ、と言う風に示す斜めに線をたくさん引いて表す描き方です。
絵画技法としては細かく(あるいは粗く)平行線を引いていくことで絵に重量感を与える技法として
知られています。
又各々異なる方向に向いて描かれたハッチングを重ねて線を交差させて描く方法をクロスハッチング
といいます。
絵画では細い平行線を交差(クロスハッチング)させ、その多少によって濃淡を作っていく技法です。
線影ともいいます。
細い筆と白い絵具を用いてハイライト部分の量感を作るときにも使用されます。
言葉だけではよく分からないかも知れませんが、鉛筆でクロスハッチングの練習をすれば、その
効果が実感できるかもしれません。
白い画用紙(何でもよい)に球形を描きましょう、
光を1方向に定めて、その球の陰影をクロスハッチングで描き分ける方法です。
影の濃いところは細い平行線を細かくたくさん引いていきます。右斜めに引いたら、今度は左斜めに
引きます。陰の薄いところはクロスハッチングの平行線の幅を広くしましょう。
濃いところを描く時に鉛筆の筆圧を上げないように、筆圧はすべて同じ程度にしましょう。
最初は線ががたがたで美しくありませんが、やがてやっている内に真っ直ぐなきれいな線が引けれ
ようになります。
しかしハッチングに気を取られて全体の意識が薄くなってはいけません。
クロスハッチングは単に陰影を作る技法としての紹介です。こだわる必要はありません。

油絵の技法 その3 スカンブリング

擦りぼかしといいます。
隙間から下地の色が見えるように不規則な模様を描く技法です。
不透明、又は半透明な絵具を乾いた絵具の層の上にぼかして塗り、上層と下層の色調が
響きあう効果を出すテクニックです。
下層の絵具を上手く透かして見せるためには乾いた筆の筆先に、ほんの少し絵具を取り、
筆跡をかすれさせ、やや粗いタッチで不規則に筆を動かすことがコツです。
下地の絵具が乾いている上に施すので乾燥の速いアクリル画に向いた描き方です。
地色と正反対の色、同系色の色で描いてもよく、好みと狙った効果により選ぶことができます。
例えば、濃い青に薄い明るいブルー、紫を加えると色調が微妙となり発色が深まります。
注意することは土台となる色を次にスカンブリングする時にすべて消してしまわないこと。
絵具を塗るときに硬めの筆、布、指などで軽いタッチで擦る(こする)ようにします。
ドライブラシと同様、絵具を薄めて描くこともでき、水分を布や紙に吸わせてから行うと
効果的です。
絵全体がバランスがよくないときにスカンブリングで整えると、落ち着いた絵の雰囲気を
出せます。
又、モチーフの色が強すぎたり、背景から浮いて見られる場合には軽くスカンブリングを
施すと色調がぼやけてほどよく収まります。
色のコントラストを弱めたいとき、色合いを和やかにしたいときなどに便利です。

油絵の技法 その2 ぼかしとスフマート

ぼかしは平塗りから徐徐に色を薄く伸ばしていく技法で、絵具の柔らかい内に、刷毛や布 指などを使って、色を混ぜていきます。 このぼかしは大きな空間を表現するのに向いています。 この技法は製作途中でよく使われます。 空を描く時に、下に塗った色が乾かないうちに雲の白色を多めにのせます。そして指で 円を描くようにぼかしていく方法です。 わずかなムラが雲の形にボリュームを与えてくれます。 ファンという筆を使う場合もあります。 これを使ってすこしずつ2色の色が混じりあうようにぼかしていきます。 水面や雨上がりの路面の写り込みを描く時に重宝します。 たたきぼかし、という技法もあります。 絵具をたんぽや穂先を切った筆などにつけて、キャンバスにたたきつけながら霧を吹きつけた ような効果が得られます。

ぼかしはつまりは絵具がぬれている間に別な絵具を塗って相互が干渉しあって中間色として 混じりあった状態をいいます。 水彩画などでも広く使われている方法ですが、水彩の場合は水をたっぷり使って、色そのものを ぼかしていきます。

スフマート スフマートはレオナルドダビンチが開発したと言われていますが、別に特別な秘技というほどの ものではありません。 要は、ぼかしによる空気遠近法ということです。 輪郭線をなだらかにぼかして、明暗によって遠近感をつける、という方法です。 中国や日本の水墨の山水画でもよく使われています。

油絵の技法 その1 平塗り

広い面積を塗る平塗りは、わずかに異なる色を2度塗りしますと、厚みにある色面が得られます。 美しく色をのせていく方法として 溶き油で絵具をゆるめて流動性を持たせて、刷毛(やわらかい毛)で塗り広げていく、そして 画面全体が均質になるよう何度も刷毛を返しながら塗り進めていきます。 若干キャンバスの目が残りますが、このわずかな起伏が後の塗り重ねに効果を発揮します。

堅めの刷毛(豚毛)で塗りこむ方法もあります。 刷毛を画面に対して立てて、絵具をキャンバスにすり込むように塗っていきます。 円を描くように塗りこむと模様が出て、画面に重厚さが出ます。 厚塗りができるのも油絵の特徴です。 たっぷり多めの絵具をパレット上で調合して、キャンバスにやや筆を寝かせて、絵具を盛り付ける ようにのせます。

制作途中で使われる平塗りの画法として かすれ があります。 硬い刷毛で溶き油を使わないで刷毛を寝かせて、縦か横に引っ張るような感じで描きますと かすれた感じが出ます。 板などを描く時にかすれた感じを出すときに使用されます。 刷毛の代わりにナイフを使ってかすれた感じを出す場合もあります。 下の絵具が乾かないうちに、絵具をのせて縦や横に引っ張ると油絵独特のねばりで、さざなみなどが 表現できます。

色の知識その11 わき道 絵を学ぶということ

よく絵を描き始めた人から基礎がないから不安です、という人がいますが、大切なことは 絵を描きたいという強い気持ちです。描いている内に必ず技術的な壁にぶつかるでしょう。 そのときになって必要な技術を学びますとしっかり身につきます。 基礎は後からでもいいのです。 絵を学ぶのに2つの方法があります。 1つは自然から学ぶということに徹して、目に見える世界を忠実に再現することです。 忠実に見えてる世界を描いていると、正しくものを見てる、という実感が湧くようになります。 この実感がより深く絵の世界に入っていく原動力となります。 見えている、と言う言葉には理解ができている、と言う意味があります。 忠実にモチーフを描いていると、やがて目に映らないようなものを描こうと思うようになります。 温度、湿度、重さ、硬さ、質感、匂いなどです。 これらは目には見えません。しかし何を描きたいかの答えを出すためには重要な表現対象です。 そして2つ目は自分自身がいいと思えるような絵を描くことです。 目に映っている対象物は視覚だけでなく、音や、匂いや手触りなどと一緒に認識されています。 これらを視覚だけでなく、これに補う形で、色や形を工夫して目に見えるようにすることが 絵を描く意味になり、本当に自分自身が表現した絵ということになります。 風景画を描く時の空気感とはこういうことです。  よい作品とは作者の気持ちが込められた、作者らしい世界観が描かれたものです。 いわば、作品は作者の分身のようなものです。

 

色の知識その10 色の不思議

白と黒と赤の不思議 絵から少し離れて、色の世界の話をします。 白、黒、赤の三色は死や生成や誕生といった生命現象と結びつき原色の色と言われています。 白は誕生のシンボルです。清浄無垢な色としての白は花嫁が結婚を報告するために白無垢を 付け、けがれを清める色として明治以前から日本では白を喪色としてきました。 白のイメージとして良いイメージは清浄、神聖、潔白、真理、理知的という言葉がみつかります。 悪いイメージでは空虚、頼りない、冷たい、薄情、無意味などの言葉が連想されます。

では黒はどうでしょう。 黒は全ての光を吸収します。目に光が届かないため色を感じることができません。 光が欠乏した色、異端な色です。 目に視神経を刺激する光の波が入ってこないので視神経が何の反応も示さず、無彩色、つまり 黒に見えるのです。 黒には癒しの効果があります。 黒は疲れた人には休息の色です。 白を見ると、刺激が強く、体が緊張しますが、黒には刺激がありません。興奮がほぐれ 心身ともにリラックスします。 黒の良いイメージは力、自律、絶対的、厳粛、などの言葉が連想されます。 悪いイメージでは死、不安、陰気、悪、孤独などの言葉があります。

赤はどうでしょう。 赤は熱く、力強い色です。赤は使い方によって毒にも薬にもなります。 赤は体内にたぎる血の色、祝いや喜びの色です。 赤は積極的で動きのある色、強い力を持った色です。 うまく使えば行動力の源となり、行き過ぎると有害な色です。 赤い薬は興奮作用があります。トウガラシ、ジャコウなどがそうです。 赤の効能は冷たいものを温め、中和する働きがあります。 又エネルギーを補うこともできます。

色の知識その9 色使いのルール

油絵を描く上において、色使いには基本的なルールがあります。 こうしなければならない、というものではありませんが、絵を描く時の基本的な知識として 知っておきたい事柄です。 混ぜる絵具の量を変えることで、色の数は無限に作れます。 絵具の数を増して混ぜると限りなく黒に近づきます。 たくさんの混色は濁りの原因となります。 混色は3色までとしましょう。 白を混ぜると明度は高くなって彩度は落ちます。 補色同士を混ぜるとグレーになることを使用して、ある色を少し渋くしたい、深みを出したい。 と言うときはその色の補色や反対色を混ぜるのがポイントです。 黒は色味を無くさせ、混濁の原因となりますので要注意でし。

描きだしは明るく、淡い色から 油絵具は重ね塗りが自由です。完成するまでにたくさんの色がキャンバス上で重なり合っていきます。 着色力が強く、他の色に影響しやすい色や、混色した色を描き出しから使うと、描き進める内に 画面全体の色調が鈍くなったりします。 明るい色、濁りのない色から描きだして、少しずつ濃く、そして層を厚くしていきます。

コンポーズ系の色は単独で使用しましょう コンポーズとは調合された、という意味です。既に3色以上の色が混じっています。 他の色を混ぜると、色の鮮やかさがなくなり、濁りの原因となります。 ジョーンブリアン、ネーブルスイエロー、コーラルレッド、ブリリアントピンクなどがあります。

絵具層の乾きを待つ 油絵具は乾くまで時間がかかります。 下の絵具が乾かない内に次の色を重ねると、キャンバス上でたくさんの色を混色していると同じ結果 となります。濁ります。 絵具の表面を軽く指で触って、絵具が指に付かない、生乾き状態が重ね塗りのベストタイミングです。

色の知識 その8 暖色、寒色

暖色の色は膨張色、進出色ともいいます。それに対して、寒色系の色は収縮色、後退色 といいます。 色相環で見ると、橙と青が暖色、寒色の中心となります。 赤紫と黄緑はその中間の色ということになります。 ですから、色は橙に近くなれば暖かい色になり、青に近づけば冷たく感じられる色となります。

色も温度感のようなものがあります。視覚と触覚とは本来別の感覚ですが、色によっては 暖かく感じるものと、冷たく感じるものがあります。これを色の温度と表現することができます。 寒色系の配色の部屋と暖色系の配色の部屋では体感温度が3℃くらい違うという実験結果が あります。これは暖色系の色は炎や太陽を寒色系の色は水や氷をイメージさせるからだといいます。

絵を描く時に必要な知識として 視覚的なイメージとして、冷たい色は、つまり寒色は後退して感じられるのに対して、 暖色系の色は前進して見えます。 これは絵を描く時の基本の1つです。 遠くの山を青味のある色で描くと遠くに見えるのはそのためです。

暖色系の色は血圧や心拍数を高め、自律神経を刺激し、性欲や食欲を増大させます。 寒色系の色はその逆に作用します。 そのため飲食店や料理の本などでは、料理をおいしく見せて、食べたいという欲求をうながす ために暖色系の配色が適しています。 しかし上手に使えば、寒色系の色でも、野菜や魚などを新鮮に見せる効果もあります。

色の知識 その7 混色

私たちが日頃見慣れている自然界の中にあるもので何々色と呼べるものは非常に少ない と思います。 ほとんどが中間色、つまりグレートーンの近くにあります。 そのグレイの中に色味を見せることが絵を描く時にとても大切です。(色味とは中間色の 中に感じ取れる色のこと) 色の組み合わせにはいくつかの注意点があります。 思い通りの色が出ない、発色が悪くなってしまう、という場合は必ず原因があります。 色を美しく見せるためには必要な基本的な混色と組み合わせのルールを知らなくてはなりません。 発色のよい混色のルール 色相環から赤と青を混色すると紫が作れます。 くもった紫になります。これは赤にも、青にも紫の補色である黄色味が含まれているからです。 それでは紫寄りの赤と紫寄りの青を混ぜます。 すると鮮やかな紫が作れます。 もう1つ 紫と緑を混色すると青ができます。 やはりくもった青になります。これは紫にも緑にも青の補色である橙が含まれているからです。 青寄りの青紫と青寄りの青紫を混ぜると鮮やかな青が作れます。

色は美しく見える組み合わせと、そうは見えない組み合わせがあります。 明度や彩度を揃えて、美しく見える組み合わせにすることを、トーンを合わせる、と言います。 トーンが揃わないと、人の目の網膜の中の明暗を見分ける細胞が働き、色を感じしにくくなります。  他にも色の組み合わせのルールとして バルール(色価)を合わせる どんな色でも2色並べると、どちらかが手前で、どちらかが奥に見えます。 この奥行きの位置を揃えることをバルールを合わせるといいます。 色の厚みで変わる発色 同じ色でも、厚塗りか薄塗りかでまるで発色が変わります。 目は絵の表面を見ているようで、実は量も感じているのです。

色の知識 その6 補色

12色の色相環で、向かい合う正反対の位置にある色の組み合わせを補色と言います。 反対色ともいいます。  赤ー緑  赤橙ー青緑  橙ー青  黄橙ー青紫  黄ー紫  黄緑ー赤紫 この補色の関係の色を並べると、明度、彩度の低い方が高い方を引き立て、色彩が際たちます。 同明度、同彩度を画面に並べると、色同士がケンカする場合があります。 調和した色合いにならない、ということです。 補色の色同士を混ぜると、色相が変わらず混色したグレーに近づいていきます。 例えば  赤+緑=混色したグレイ  橙+青=混色したグレイ   黄+紫=混色したグレイ この混色したグレイを補色関係にある色の影に使うとよく調和します。 例えば 赤い花とその緑の葉、その影にこの混色を使う。

絵を描く時、この補色の関係、効果は知っておかねばなりません。 そして各色の前後の類似色と混色のハーモニーで絵が構成されます。

全く正反対の特性を持つ補色は互いに色を際たたせ、強調する作用があります。 例えば ゴッホの有名な「夜のカフェテラス」 照らされて黄色く、そしてオレンジのカフェテラス、夜空は青色です。 補色をうまく使っています。 静けさの青、暖かいカフェテラスの黄色で雰囲気が強調されています。 ゴッホは黄色やオレンジの印象が強いですが、青色の使い方にゴッホの魅力があるのかも しれません。

色の知識 その5 彩度

彩度は前項で述べたように色相、明度と合わせた色の3属性の1種です。 彩度は色の鮮やかさの尺度です。 英語ではSATURATIONといい、飽和度と訳します。つまり全体の明るさに対する色味の 割合ということになります。 従って、白の彩度は0であるが、単色光の彩度は必ずしも1ではない。 彩度を上げていきますと、カラフルで鮮やかな色となります。 彩度を下げていきますと、カラーのない白黒になります。 有彩色、無彩色という言い方に変えることもできます。 有彩色は文字通り色がある、カラーがある色です。 無彩色はカラーのない、白黒、灰色(最も鮮やかさのない色)のことです。 昔の白黒テレビの無彩色の世界です。

同じ黄色でもレモン梨を比べるとよく分かります。 レモンはあざやかな黄色で、梨はにぶい色の黄色です。 このように鮮やかさに違いがあります。 絵具などでは絵具の色が冴えすぎている場合は白を少量混色して調子を落とします。 逆に鮮やかさや透明感が欲しい場合は、むやみに混色しない方がいいです。 赤系統の色でも日の丸は鮮やかな赤ですが、レンガ色はくすんだ赤色です。 うぐいす色はくすんだ黄緑ですが、初夏の若葉は鮮やかな黄緑です。 このように、彩度は絵画の雰囲気つくりに重要な役割を持っています。

 

色の知識 その4 明度

前項の色相環で色相について述べました。ここでは明度について述べますが、次項の 彩度と合わせて、これを色の3属性といいます。  色は明るい色、暗い色があります。この色の明るさのことを明度といいます。 これは光の反射によるもので、光を全部反射するものは白です。全部吸収してしまうものは 黒です。 油絵具の場合は、色を明るくするために白を加えますが、水彩画の場合は水で薄めると 明るくなります。 又、絵具そのものにも固有の明度があります。 明度を表すのに便宜的に10進法が用いられます。白は9.5 黒は1とします。 レモンイエローが最も明るく9.0です。 カドミュームイエロー、7.5 イエローオーカー、オレンジ、グリーンが6.0です。 ウルトラマリンは2.5です。

明度と彩度という形で説明すると分かり易いかもしれません。  明度が高く、彩度が低い レモンイエロー等の黄色は明度が高いです。 赤、紺、藍色は明度が低い色です。 彩度は色の鮮やかさのことです。絵具の場合は灰色が混じっているかどうか、ということです。 灰色を混ぜると、濁った色になります。 灰色の量を増やすと明度は高いが、彩度は低い色になります。  明度は低いが、彩度は高い 赤、紺、藍色がそうです。黄色よりも暗く見えます。 彩度が高いということはなにも混ざっていないということです。純色です。 青は明度が低く、彩度は高い色ということになります。

色の知識 その3 色相環

色相関は配色に迷った時、便利なものです。これで大体のあたりをつけることができます。
色相関を分かり易く言いますと、雨上がりの空に見える虹です。
虹の色の順番は赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色です。
これに赤紫と隣り合う中間色4色を加えて、サークル状に並べたものが色相環です。
この色の順番は
赤、赤味の橙、黄橙、黄色、黄緑、緑、青緑、緑青、青、藍、紫、赤紫の12色です。
24色相環もあります。
この並べ方は日本色研配色体系(PCCS)の色相環です。
隣り合う色の混色、中間色は無限にあります。
色の説明には都合のよいものですが、実際には言葉では説明できない色が限りなくあると
考えてください。
この色相環の使い方としては
配色の大体のあたりをつける以外にこの次の項で出てくる明度、彩度も考えながら色を決める
のに使います。
そして、その色の類似色も見ておきます。
その色の前後の色です。対象物の雰囲気を強調したいとき、雰囲気になじませたい時に参考と
なります。
又補色(反対色)といって色相環の各々反対側に位置する色同士のことをいいますが、対象物を
目立ちさせたい時に良く使われる手法です。
絵を描く人にとって、この色相環は必らず、持っていなくてはなりません。
混色を作る時の参考として、絵の雰囲気に色をどう合わせるかの検討資料として、常に使います。

色の知識 その2 3原色

色の3原色は光の3原色と絵具(物体)の3原色があります。
混色は加法混色と減法混色があります。

光の3原色RGBと加法混色

光の3原色は赤(R)、青(B),緑(G)の3色です。
3色全部合わせて混合すると白色になります。
色を混ぜ合わせると、色々な色ができます。

光の3原色の混法は加法混色です。 これであらゆる色ができます。 加法混色とは光の足し算が原理となる混色。足すという意味です。 混色した後の色がもとの色より明るくなる性質があります。

加法混色の3原色は色光の3原色とも呼ばれ、RGBで表します。
加法混色の3原色の内、2色を混ぜ合わせると

  • 赤(R)+緑(G)=黄色(Y) 濃淡によって無限の色ができます。
  • 緑(G)+青(B)=シアン(C)緑味の青
  • 青(B)+赤(R)=マゼンタ(M)赤紫

絵具(物体)の3原色CMYと減法混色

絵具(物体)の3原色は緑味の青(シアン)、赤紫(マゼンタ)、黄色の3色です。CMYと表します。 混色は減法混色といいます。光の引き算が原理となる混色です。  
混色した後の色は加法混色とは違い、もとの色より暗くなります

減法混色は絵具や塗料など、色そのものを混ぜ合わせることです。
減法混色の3原色の内、2色を混ぜ合わせると

  • 黄色(Y)+シアン(C)=緑(G) 濃淡によって無限の色ができます。
  • シアン(C)+マゼンタ(M)=青(B)
  • マゼンタ(M)+黄色(Y)=赤(R)

ここでできた3つの色は加法混色の3色と同じです。

色の知識その1 色と名称(名称と意味)

油絵具は基本的に赤、青、黄色の3原色に白を含めた4色があればほとんどの色が作れます。 又、その4色のみでパレット上で好みの色を作って作品を作っている画家もいます。

一般的には原色、混色、合わせて200種類以上の色の種類からモチーフに合った、又は 自らの感性や好みで選択して描くことになります。

とてもここでは全ての色の紹介はできませんが、代表的な色のみを紹介します。 ここのあげる代表的な色を知って、徐徐にその前後の色も覚えて、使い方を勉強して欲しい。 絵具は赤系統のものが最も多く、緑系統がそれに続きます。

赤系統
クリムソンレーキ:青みの強い透明な淡紅色
カドミュームレッド:明度彩度が強い、不透明な色
バーミリオン:朱色、日光が当たると黒ずむ、硫化水銀でできている、価格高い

紫系統
コバルトバイオレット:コバルトを使った透明な赤味のある紫色、価格高い
ミネラルバイオレット:鉱物性の紫、燐酸マンガンを使用、毒性あり

黄系統
パーマネントイエロー:普通の黄色、耐光性高い、価格安い
カドミュームイエロー:硫化カドミュームからできている

青系統
コバルトブルー:アルミン酸コバルトが主成分、丈夫な色、価格少し高め
セルリアンブルー:紫味のない空色、錫酸コバルトからできている、丈夫な色、高い

緑系統
ピリジャン:透明で鮮やかな冷たい緑色
コバルトグリーン:青みのある半透明な色、酸化コバルト、酸化亜鉛からできている

茶系統
ローアンバー:緑かかったこげ茶色
バーントシェンナ:赤味かかった透明な茶色

白系統
パーマネントホワイト:従来のホワイトの毒性や混色制限を改善した色

黒系統
アイボリーブラック:着色力の強い暖色系の赤味の黒、乾燥遅い