14)日本の洋画黎明期の画家たち その4 川原慶賀

その4 川原慶賀

天明6年(1786年)長崎の今下町に生まれる。万延元年(1860年)没。 江戸時代後期の長崎の西洋風画家である。 出島出入り絵師として、風俗画、風景画、肖像画、生物の精細な写生図なども描いた。 父親(川原香山)も町絵師であった。 当時の長崎で絵師の第一人者として活躍していた石崎融思に師事し、頭角を現す。 出島オランダ商館への出入りを許されて長崎の風俗画や風景画、出島の商館員達の生活も描いた。 文政6年(1823年)にシーボルトが商館付き医師として来日し、日本の動植物などを蒐集 し始めた。慶賀はこのシーボルトの求めに応じて、日本という本の挿絵のために精細な動植物の 写生図を描いた。 又、文政9年(1826年)のオランダ商館長の江戸参府にシーボルトに同行して、道中の 風景画、風俗画、人物画なども描いた。 慶賀は伝統的な日本画法に西洋画法を取り入れていた。また精細な動植物については、シーボルト の指導もあった。 日本に現存する作品は約100点、オランダに送られてヨーロッパ各地に分散した慶賀の作品は 6000-7000点とも言われている。 慶賀の描いた動植物図のほとんどはオランダに送られ、シーボルトの著作である日本動物誌等の 図として使用された。 慶賀の作品は長崎歴史博物館、福岡市博物館などに所蔵されている。

14)日本の洋画黎明期の画家たち その3 佐竹曙山

その3 佐竹曙山(義敦)

寛延元年(1748年)-天明5年(1785年) 出羽の国久保田藩(秋田藩)第8代藩主、曙山は号、本名 義敦。 明和年頃(1765年)、絵描きとしては最大の正統派と呼ばれている狩野派から絵を学んだ。 そして藩士の小野田直武からからも教えを受けて、日本画と西洋画を組み合わせた一代的な画法 を作り出した。 佐竹義敦の命により、平賀源内の下で絵の修行に励んだ小野田直武は源内の友人であった杉田玄白 の解体新書における付図の作画を行った。 そして秋田の帰国後、義敦と直武は画法綱領、画図理解 などの西洋画論を著した。 これは日本最初の西洋画論である。 義敦は松に唐鳥図(重要文化財)、燕子花にハサミ図、竹に文鳥図、湖山風景図などの絵画のほか 膨大な数のスケッチを描き、それを写生帖にまとめている。 義敦と直武が創始した洋風画は秋田派とも秋田蘭画とも呼ばれている。 義敦は天明5年(1785年)38歳で死去した。 秋田蘭画の多くは絹本着色で掛け幅という東洋画の伝統的な形態をとりながらも、画題の上では 洋風の風景画や静物画を、技法の上では陰影法、や大気遠近法など、西洋絵画の手法を多く 取り入れており、近景に濃淡の花鳥、静物をおき、遠景には水辺などの風景、あるいは何も描かず 淡い色彩で距離感を表している場合が多く、また縦長構図の作品が多い。

14)、日本の洋画黎明期の画家たち その2 小野田直武

その2 小野田直武

小野田直武は寛延2年(1750年)に秋田藩角館に生まれた。安永9年(1780年)没。 江戸時代中期の画家であり、秋田藩士。 平賀源内から洋画を学び、秋田蘭画と呼ばれる一派を形成した。 安永2年(1773年)鉱山技術の指導のため平賀源内が秋田を訪れ、直武と出会う。 一説には宿の屏風絵に感心した源内が作者である直武を呼んだとか。 源内は直武に西洋画を教えた。日本画にない陰影法、や遠近法を教えた。 同年、直武は江戸の源内のところに寄寓する。 そして、前沢良次、杉田玄白らによる解体新書の翻訳作業が行われ、図版を印刷するために大量の図を 写し取る必要があり、玄白と源内が親友であることから直武がその作業を行うことになった。 解体新書の前に解体約図が発行されていて、直武が担当した解体新書の方が陰影表現に優れていた。 直武は源内のもとで西洋絵画技法を自己のものとし、日本画と西洋画を融合した画風を確立していく。 そして、佐竹曙山や佐竹義躬に対し絵の指導を行い、この3人が中心となった一派が秋田蘭画又は 秋田派となった。 小野田直武の代表作 東叡山不忍池図(秋田県立近代美術館) 児童愛犬図(秋田市立千秋美術館) 唐太宗花鳥山水図(秋田県立近代美術館) 笹に白兎図(秋田市立千秋美術館) などがある。

14)、日本の洋画黎明期の画家たち その1 平賀源内

その1 平賀源内(雅号 鳩渓)

平賀源内は享保13年(1728年)讃岐国寒川郡志度浦(現在の香川県さぬき市志度)に生まれる。 そして亡くなる安永8年(1780年)まで、いわば江戸時代中期に、各方面、分野で活躍した 偉人、天才であった。 本草学者、地質学者、蘭学者、医者、殖産事業家、戯作家、浄瑠璃作家、俳人、洋画家(蘭画家)、 発明家として極めて多彩な才能をいかんなく発揮した時代の先駆者、偉人であった。 画家としての源内は明和7年(1769年)ごろ2回目の長崎遊学によってオランダの洋風画法を学んで いる。 その時に描いた作品が神戸市博物館に所蔵されている。 「西洋婦人図」である。 これが日本における最初の油絵と思われる。 写実的な西洋画に強く引かれた源内は自ら実技を身に付けてこの絵を描いた。 その2年後、秋田の鉱山指導に招かれて、角館の宿で小野田直武に西洋画の陰影法、遠近法を 教えている。 それがきっかけで小野田直武は江戸に立ち、解体新書の挿絵を描き、西洋画法を身に付けて秋田に 蘭画が広まる。 秋田蘭画ー司馬紅漢の銅版画、小野田直武の油絵と続く日本西洋画の流れの源流に源内がいたと 推察される。 源内の才能は多岐にわたり、洋画だけでなく、                    発明家としての源内ーー日本初の万歩計、磁針計、水準器、発電機(エレキテル)などの発明                                                                                                                                     文筆家としての源内ーー戯作家、浄瑠璃作家 陶芸家としての源内ーー源内焼き、陶芸指導者                                                                                                                                     本草家としての源内ーー今の薬学、博物学のことで、日本初の物産展の開催                     起業家としての源内ーー製陶事業、羅紗の製造 鉱山家としての源内ーー金、銀、銅、磁石、などの採掘

 

人物画の描き方 その4 色の塗り方

最初は絵具を薄く溶いた、おつゆの状態で下塗りします。 細かく描く必要はありません。筆を使って大まかに描きます。 細い筆でチョコチョコ描いても、いきいきした絵になりません。太い筆で面を描くように塗って いきましょう。 この時、人物をよく観察しながら明暗も入れていきましょう。 明るさは細かく分ける必要はありませんが、3-4段階くらいに分けて塗った方がいいでしょう。 明るい部分から暗い部分への変化を描写することで、顔の凸凹や衣服のしわなどが表現でき、 質感も出すことができます。

次は人物の肌の色です。 肌の色というと一般的にはジョンブリアンという色がよく使われます。 この色だけに頼っていては本当の肌の色は出せません。 肌の色は人によって個人差があります。モデルをよく観察して肌の色の変化を捉えることが大切 です。 ピンク色に見える部分、茶色に見える部分、影の部分では灰色に見える部分などがあるでしょう。 その部分によって赤か黄色、茶などを混ぜていきます。明るさの調整は白を混ぜます。 陰の部分は調子を見ながら青や緑などを混ぜるとよいでしょう。

仕上げでは顔や肌、コスチュームなどの形や質感を表現するために細部も塗りこんでいきます。 モデルと比較して人体の形や手足の方向、目、鼻、口、などの位置関係、コスチュームのしわなど が正しく捉えられているかを確認します。 色を塗りながら、時々キャンバスから離れ、モデルと比較してみてください。

人物画の描き方 その3 人物デッサン

最初に人物デッサンを行いますが、ここで使う道具は静物画の時と同じで、木炭、鉛筆、絵具です。 鉛筆は2B-4Bの軟らかいもの、絵具は好きな色で描けばよいですが、イエローオーカーや バーントアンバーなどで薄く溶いたもので描いてもいいでしょう。 デッサンは細部を気にしないで大まかに捉えていきます。イメージ通りにキャンバスに当初考えた 人物の構図を入れ、人物の大きさや位置を考えます。 始めに頭の位置や大きさを決めますと基準ができるので他の部分が描きやすくなります。

人物画は静物画や風景画のようにモチーフをカットしたり付け足したりができません。 ごまかしができないのです。 そのためモデルをよく観察して、人体がどのような動きをしているかを捉えることが重要です。

人体には基本的な構造があります。 顔について言えば、目の高かさは頭の天辺から顎の先までの中間になる、とか、下唇の位置は 鼻の付け根と顎先の中間になる、とかです。 しかし、人には個人差があります。モデルを見るときは常に正面から見ているとは限りません。 基本的な構造にあまり捉われないで、モデルをよく観察して忠実に描くことが大切です。

手足は結構大きいのです。 手足を小さく描いてしまいがちですが、結構大きいのです。手の長さは前髪の生え際から顎先まで の長さ、足の裏の長さは手首から肘までの長さと同じ、と言われています。 座りポーズなどで手足が顔より前に出ているときは、さらに大きくなります。 不自然にならないよう注意が必要です。

人物画の描き方 その2 人物に当たる光の方向を考える

人物を描く時は光についても考えます。光の当て方によって人物の見え方や印象が変わってくるから です。 まず光源ですが、自然光が理想的ですが、無理な場合は、光の方向も調整できる室内照明を使用 しましょう。 次に明暗をよく見ます。 光を当てることによって人物に明暗ができます。この明暗を描くことによって、絵に立体感が生まれ ます。 モデルを良く見て、明るいところと暗いところを観察しましょう。 人体は想像以上に凸凹があります。丸みがあるため、その凸凹が掴みにくいのです。 モデルを見るときは正面だけでなく、横から後から色々な角度で見たりしますと、その人体の形が 掴みやすく、絵が描きやすくなります。

当然光の当て方、角度によっても印象が変わってきます。 明るくさわやかな印象を与えていたのに、光の角度を変え、暗の部分を多くして見ると陰気な感じに なってしまうということもあります。 色々な角度に光源を動かしたり、モデルに動いてもらったりして、自分のイメージを掴みましょう。 初めは前面から光を当てて描くことがいいでしょう。 真正面から当てた光では暗いところが少なく、形が掴みにくいので、斜め前からがいいでしょう。 慣れるに従い、暗部を少し多く出るような位置に光源を置くと、めりはりのある絵ができます。

人物画の描き方 その1 構図をとる

人物をどこまで入れるかによって、キャンバスの大きさが決まります。 まず、人物をどの様にキャンバスに入れるかを考えます。 6号、や8号では全身像は小さ過ぎて、入らないでしょう。 胸から上の胸像なら6号くらい、膝から上なら20号くらい、全身を描きたかったら30号以上は 要るでしょう。 次はモデルのポーズを付けます。 モデルは最初は身近な家族がいいでしょう。慣れてきたら、人物画教室に入ったり、友達に依頼 したり、あるいはモデルを雇ったりします。 自分の顔を鏡に写して、自画像を描くのもおもしろいでしょう。 部分デッサンで自分の手足を色々な角度で鉛筆デッサンをすると、基礎力向上のために、良い方法 です。 人物ポーズは顔の向きや、体の向きなどの方向を変えることによって絵に動きが出ます。 絵に安定感を与えるには前にも述べましたが三角構図によると良いです。 ポーズを決める時、モデルの意見も聞きましょう。長時間同じ姿勢を保つように依頼するわけです から無理のない姿勢でないといけません。 モデルには一定間隔で必ず休憩を入れましょう。同じ姿勢を保つということは結構疲れます。

そして次は目の高さを決めます。 目の高さによってモデルの輪郭が違って見えます。 モデルを見下ろす位置ならば、頭から脚に向かって徐徐に小さくなります。 見上げる位置ならば、脚から頭に向かって小さくなっていきます。 見る位置によって遠近が変わります。

静物画の描き方 その7 セザンヌは静物画が得意だった

ポールセザンヌは印象派ではありますが、そのまま情景を描いたわけではありません。
自然の中に幾何学を見つけ出し、それを表現しようと追求していた画家でした。
特にセザンヌが得意とした絵画は静物画で、独特な手法を取り入れています。
長方形の筆使い
セザンヌの絵画の特徴に筆使いがあります。色を塗っている部分を良く見ると、ひとつひとつの筆
使いが長方形に近い形で塗られています。
その長方形を並べて建物や、木が構成されています。
このように長方形に描くことで、絵に統一感を出しています。
幾何学的な構成
自然の中に幾何学的な配置を見付け出そうとしたセザンヌの手法は描かれているものの配置は
かなり計算されています。
セザンヌが近代絵画の父と呼ばれている理由の1つがこの構成方法なのです。
描かれているものの配置はパッと見ただけではわかりにくいですが、丸、三角、円錐、円柱になるよう
丁寧に配置されているのです。
この幾何学的な構成は20世紀になってピカソにも強く影響を与えました。
リンゴと山
セザンヌはリンゴと山の絵を多く描いています。
特にリンゴはひんぱんに題材にもなっていて、60点以上もの絵として残っています。
また、山の絵は晩年に多く描かれていて、こちらも40点以上、絵が残っています。
リンゴも山も平面的に見える色の塗り方が色によって、わずかな立体感を出しています。

静物画の描き方 その6 静物画の基本は三角構図

静物画といえば、一般的にセザンヌでしょうか。オランダの静物画、フランスのシャルダン、マチス もいい、ピカソもいい静物画があります。 静物画はもともと豊作を表すのでしょうか、獲物や収穫物が描かれてきました。 西洋の静物画は鳥やウサギの死骸や肉が生々しく描かれています。 その点、東洋の静物画は花や、野菜、果物がほとんどで、やはり日本人は東洋の絵のほうが向いている。

静物画を描く場合も風景画と全く同じです。 横軸が肝心で、背景と舞台。この舞台の上に色々なものがあるあるという構造を捉えることが大切です。 風景のように上から見るように描く方が、見る人に新鮮に映るでしょう。 次は構図、構図はとにかく三角構図、これが基本です。 まず安定していて、その中に流れがあるように作ります。 静物画はモチーフを置く、最初のレイアウトがすごく重要です。 これもピラミッドに置けばいいわけですから、そんなに悩むことはありません。 たくさん描かなければ話になりません。 そして感動です。描く喜び。 この感動と喜びの前に上手い、下手もありません。 この気持さえ忘れなければ、全ての絵画は美しい。 反対に、感動もない、喜びもない、ただ上手いだけの絵は不要です。

静物画の描き方 その5 静物画の遠近感

モチーフをいくつかの部品で構成する場合、目線の高さが問題となります。
静物画の中には見下ろした視点で描かれた絵が数多く見られます。
その原因は色々でしょう。モチーフを置いたテーブルの高さ、と自分の座っているイスの高さと
両者の距離によって、たまたまそういう目線になってしまった。
また、モチーフをしっかり見ようとして、つい、体を乗り出して覗き込んだようになってしまった。
低い目線で見たにもかかわらず、形を間違えて上から見下ろすような形に描いてしまった。
理由はいろいろですが、静物を描こうとモチーフをテーブルに並べる時に、目の高さも意識して
いつもより低い視点から描くことを体験してみてください。
上から見下ろすと、モチーフはよく見えますから、それぞれをしっかり描こうとする人は都合の
良い配置です。
しかしそれだけモチーフがバラバラに点在した格好にになってしまい、構図的な繋がりを欠き、個個
のモチーフを説明しただけの絵になり易い。
目線を下げますとモチーフ同士が重なり合う場合があります。
しかしモチーフとモチーフのつながりが出てきて、形が連携してきます。
モチーフ間の前後関係も感じ取ることもできます。
静物画も風景画と同じように遠近感が大事です。

静物画の描き方 その4 静物を描く(例2)

フランス人形と陶器
1、アングルを決めます。両手でワクを作って構図をイメージし、中心に何がくるかを頭に入れます。
2、構図を決める。指をスケールかわりにして、モチーフが画面に収まった状態うぃイメージする。
3、キャンバスに濃い目のブルーグレーでモチーフの位置と関係、形をおおまかに描いていきます。
4、背景の布地やモチーフの影など、画面全体の中で暗い部分からブルーグレーで塗ります。
5、明るい部分は布で絵具を拭き取るように描いていきます。
6、構図を修正する。画面全体のバランスが見えたこの時点で絵具が乾かないうちに、納得がいくまで
形や構図を修正します。
7、固有色を塗る。それぞれのモチーフに固有色を塗っていきます。いきなり明るい色を塗らず、影側
の色をイメージして広めに塗ります。
8、背景の色を混ぜたグレーでモチーフ全体の影を繋いでいきます。
9、静物は特に足元の位置関係が大切です。輪郭をしっかり取りましょう。
10、人間の眼は、色と形が同時に見えません。色を塗るときは広めに塗り、形は背景の色で絞り込む
ように塗るつぶしながら決めていきます。
11、細部を描き始めます。まずは全体のバランスをチェックしながら主役から描きます。
12、ブルーの濃い目のワインのビンはピリジャンとウルトラマリンを濃い目に溶いて、グレーズする
ことで透明感が表現されます。
13、すべての物が、それを見る距離によって違って見えています。手元で描いた1筆が離れて見た時
に効果があるかどうか、離れて眺める時間を持ちましょう。
14、全体をチェックする。自分の絵に眼がだいぶ慣れてしまう頃です。絵を逆さまににして離れて
眺め、不自然なところがないかチェックします。
15、全体を描き進めていく途中で主役が負けてしまわないよう、時々手をいれます。
16、モチーフを描きこんでいきます。
17、全体にハイライトを入れます。ハイライトは面積を絞り込むほど効果があります。
18、仕上げ。顔などの細かい部分を描くときは腕枕を使うと筆先が安定します。

静物画の描き方 その3 静物を描く(例1)

フランス人形と陶器
静物は、じっくりマイペースで制作を進めることができるので初心者に最適です。
複数のモチーフを組み合わせて描いてみましょう。モチーフが多いと描くのが大変だと思うかも
しれませんが、画面のバランスを整えたり、コントラストを生み出す際に、ある程度選択肢が多い
方が組み立てやすくなります。
モチーフは気に入ったものを使えばいのですが、形や色、大きさなどに変化があるものを組み合わせる
と、構成の選択肢が増えます。
モチーフを置く場所は、モチーフに当たる光が一定で、モチーフの物質感などを観察するのに適した
場所を選びます。直射日光があたるなど、光源の不安定な場所は避けましょう。
どんな複雑なモチーフも、目を細めて見れば、いくつかのグループとして把握できます。大切なことは
モチーフ全体を眺めて、どこを鮮やかにして、どのような仕上がりにもっていきたいかを、頭の中に
描いてから制作にとりかかることです。
キャンバスには事前に中間色で地塗りをしておくと、重ねる色との割合により、明暗だけでなく色味
が生まれ、色を作っていくきっかけになります。
これはモノトーンのグリザイユに対し、カマイユと呼ばれています。
モチーフの組み方は主役を真ん中に、背の高いものは後に、小さいものは手前にが基本です。
光の方向も考えながら左右のバランス、各々の部品が主張する色のバランス、遠近感などを勘案しながら
時間をかけて配置作りをしましょう。

静物画の描き方 その2 静物画の大事なこと

絵画の中で静物画は代表的なものとして見られます。
静物画は大事なのは静物画の中に描かれているモノを見るだけでなく、そのモノとモノの間の
空間を見ることです。
つまり、奥行き、床に傾きを見ることである。これは人物画と違って静物画は特に大事にして
いかねばならないことです。
静物画に奥行きや、立体感を持たせるにはやはり、スクリーンに入るモノをしっかり描くこと
そしてそのモノの影をしっかり描くことです。
それが描けてから、奥行きや立体感まで感じられるレベルまで成長する。
油絵としての静物画は具象画や抽象画など、様々な分野に分かれるが、この際の具象画で重要
なことは、どこまで色味が見えるか、その色味を表現できるかです。
具象画ではデッサンと同じく、奥行きも大切だが、その場の雰囲気を表すことも大事である。
どこにどのような色を置くかによって、全体の雰囲気が違ってくる。色を選ぶときは慎重に
選ばなければならない。
形は抽象画の場合、簡素化するだけでなく変形したり、独自の見方によって想像もつかないような
形になることもある。
その際はモノから感じることが重要視される。
つまり感受性がもっとも必要とされる。
合わせてバランスも全体的な雰囲気作りを担っている。
それが作者の作風に繋がっていく。

静物画の描き方 その1 制作手順の一例(2)

荒描き 素描が乾いたら、例えばシェンナやアンバーで大きな陰影をつけます。 溶き油はサンシックンドリンシードオイルをテレピンで薄く希釈して使用します。 次は太い筆で大まかな色を塗っていきます。 筆は豚毛の丸筆だいいでしょう。 溶き油はテレピンの量を徐徐に減らして、乾性油を多めにしていきます。 できれば2-3種類の溶き油の配合したものを準備しておくといいでしょう。 荒描き 次は全体的に固有色で塗りわけましょう。 陰影などを付けながら、徐徐に細かな部分を描いていきます。 1回や2回塗った暗いではなかなか感じがでてこないので、繰り返し塗り重ねていきます。 明るい部分、暗い部分、あるいはハイライトを入れていきます。   最終的には個々のモチーフを描写するのに豚毛の他にもマングース毛も使用するといいでしょう。

これはあくまでも一例にすぎません。 基本的には絵を描くのにマニュアルというものはありません。 絵を見て感銘を受けるということは、その作者のものの見方、感じ方、表現など、これまでにない 経験しなかったようなもの、何かを受け取るからです。 制作手順にしても、当初は教則本などに頼りますが、次回からは自分に合った、好きな描き方を 見つける旅に出かけなくてはなりません。

静物画の描き方 その1 制作手順の一例(1)

パネル作り  シナ合板でパネルを作り、亜麻の生地キャンバスを膠液でのり付けして、支持体とする。 生地キャンバスとはまだ地塗りや膠引きがされていない状態の画布のことです。 例えばクレサンの亜麻生地キャンバス麻、中細目    ホルベインの板絵用麻布    膠はホルベインの専門家用顔料#180 市販のキャンバスの既に下地処理がされているものでもかまいません。細目がいいでしょう。 しかし地塗りをしっかり行っておく必要があります。

地塗り パネルに白亜の地塗りを行います。 白亜はホルベイン又はマツダのムードン(下地用)、及びムードン(仕上げ用)とチタニューム ホワイトを膠液に混ぜ、冷やした後にサンシックリンシードオイルを加えて攪拌して、これを塗布 します。 下塗り 地塗りがよく乾燥してから、例えばイエローオーカーなどで全体をぬります。 溶き油はテレピンで薄く溶いたリンシードを使用します。 素描(デッサン) 油絵具のアンバーか木炭を使って、素描を行います。 鉛筆ですと、濃い線が完成後、目立ってしまう場合があり好ましくありません。 油絵具で引いた線は、すぐに布でぬぐえば取れますので描き直しが容易です。 構図取りは非常に大切な工程ですので、しっかり構想を練ったものを描きましょう。

風景画の描き方 その24 仕上げの一筆

画竜(がりょう)点睛を欠く。It lacks finising touches. もっとも重要なところに手を入れて、全体を生き生きとさせること。 ほとんど完成しているが、肝心なところが抜けているために全体がダメになっている。

これがなかなか難しいが仕上げの一筆としては、よく見て描かなくてはならない。 プロの画家はこの勘所を経験により心得ている。 風景の中に細い平筆の横タッチが入る、これによりこの1本の横タッチが広大な空間を演出してくれる。 この横タッチは光としてとらえた方が正しい。 光のタッチで絵が活きる、これが仕上げの一筆、点睛である。 海の絵で水平線を描く時、水平線に近い海面が光を反射して輝いて見える、この横タッチの輝きが絵を 生き生きさせる。 森の奥の細道、これを光を意識して細い横タッチを入れる。これにより森のより深い奥行きを表現できる。 林立する建物の絵。遠景の日向部分が輝いて見える。縦タッチで小さな面を入れる。 山の絵で斜めタッチで輝きを細く入れる。この1本の線が山の険しさや雄大さを表す。 ペンチングナイフの効果 ペンチングナイフで画面に絵具を置くと、面ができます。 大きな面を塗ると、空間や平らな部分が素早く描けます。小さな面を塗ると、面同士がつながって 立体感が生まれます。 仕上げの画法として、こうしたことも覚えておくと、表現方法が広がります。

風景画の描き方 風景画の画面作り

風景画の画面作りのコツ、醍醐味は除く、加える、移動する、強調する、です。
風景画は場所選びが大変です。いい風景やおもしろい構図が見つかっても、邪魔になる電信棒や建物
などがあって、悩んでしまう場合があります。その場合は邪魔なものを除きましょう。そのまま描く
必要はありません。
逆に構図的に何かが不足している場合があります。木々が少ない、岩が足りない、池が小さいなどなど、
この場合は木々をあるいは岩をバランスよく、描き加えましょう。
せっかく描くのですから、よりよい配置を工夫してください。1つ加えることが、画面に安定感のある
バランスとリズムを感じさせる変化を生み出します。
この一見矛盾するようなバランスと変化を両立させることが、魅力ある画面つくりのコツです。
移動する場合もあります。
せっかく描きたいと思った風景、例えば建物を描きたいのだが、手前に木があって邪魔になっている。
だからといってその木も画面の中に入れたい。
こんなことは写生ではよくあることです。
こんな時はこの邪魔になる木を移動しましょう。どこにどのように移動するかはバランスを考えて
置いてみましょう。画面上の移動は常に考えておくべきポイントです。
但しバランスですが、左右対称は避けましょう、つまらない構図になってしまいます。
変化のあるバランス作りが大切です。
そして強調する。
もう1つの画面構成の表現です。
例えば山の連なりを描いた場合、安定しているが、少々単調でつまらない場合は、背景の山にポイント
を置き、山を大きく強く描き、手前を少し削って、山の迫力を出す。実際とは異なった絵になりますが
それが絵です。

風景画の描き方 その22 タッチの変化

横タッチと縦タッチで描くときは、基本的には平筆を使用します。 平筆を使用すると、タッチの幅を均一にそろえることができるので、面が塗りやすいのです。 近いものは太い平筆を使い、絵具を厚く強く置きます。遠くのものは、細い平筆で小さい面を置いて 弱めていきます。 一番遠いものは、タッチがあまり見えないように描きます。 タッチの変化 1、筆の太さ  太い、細い 2、筆の種類  硬い、柔らかい         豚毛平筆はタッチが残る、デザイン用平筆はタッチが残らない 3、筆につける絵具の量  多い、少ない              多ければ絵具が盛り上がり、少なければ絵具がかすれる 4、絵具に加える溶き湯の量  多い、少ない

筆使いによるタッチの種類 1、止め描きタッチ   筆のタッチを短く止めるように置いて描く。このタッチで小さな面を描くと、立体感が表現   できる。建物、かたまり状に見える木の葉、岩の面などに使う。 2、引き描きタッチ   筆のタッチを長く引いて描く、明と暗の色を1本の筆に付けて引くと、木の幹などの丸みや   立体感が表現できる。長細いものや、ものの輪郭部分に使う。 3、擦り描きタッチ   画面に筆を擦りつけるように描く。タッチにグラデーションをつけて、筆跡をなるべく残さない   ようにする表現法。広い水面や、遠くのものなどに使う。

風景画の描き方 その21 斜めタッチで立体感を

水平面(明るい 横タッチ)と垂直面(暗い 縦タッチ)で画面構成をしてきましたが、さらに斜め タッチ(明暗)を加えると、具体的な要素の立体感を増すことができます。 山の場合 山の稜線は明と暗とに分かれる。暗部に強い斜めのタッチを置くと、立体感が出る。 例えばウルトラマリンディープとクリムソンレーキを混ぜて暗色を作り、山の斜面に斜めタッチを 入れる。稜線の明暗を示す斜めタッチの角度により、山の険しさが表現できる。 雪渓などがあった場合はそこは光って見えるためタッチは要らない。 岩の場合 岩は光の角度により複雑に明と暗が変化する。その複雑な立体感を横タッチと縦タッチに斜めタッチ を加えることにより表現できる。 岩の硬い感じを出すことが大切である。ナイフを使えばシャープな岩の面を表現できる。 木の場合 広葉樹の場合は溶き油を多めに加えた緑で縦タッチの葉を置いてから斜めの枝と葉を加える。 縦タッチで幹のシルエットをつくる。枝と葉を斜めタッチで描くと、枝の奥行きや広がりが立体的に 表現できる。 針葉樹の場合は幹が垂直なので、始めに縦タッチを強く描いてから、斜めタッチの枝を左右に広げる。 家の場合 屋根は斜めでありながら、水平面と同じように光のあたる明るい面となる。斜めタッチか横タッチで 描く。 屋根瓦は良く見ると並んだ瓦の側面にカゲができる場合と下部にカゲが出来る場合とがある。 側面は斜めタッチで、下部は横タッチでカゲを入れるのがよい。

風景画の描き方 その20 横タッチは明 縦タッチは暗

風景画は大づかみにとらえると、水平面の横タッチと垂直面の縦タッチから成り立っていることが
前項で理解できるでしょう。
水平面である地面は太陽の光を受けて明るい面になります。
空も空間の広がりや空気の流れを表すため横タッチです。
地面を暗い茶色やグレーで描くのは間違い。光があたるので明るくなるはず。
水平面の明るさに対して、垂直面の遠い山や樹木、建物の壁などは暗くなります。
これらの垂直タッチで描くものは立体の物が多いのですが、奥行きのある画面をつくるために色の面
としてとらえてみましょう。
タッチを画面構成で見てみましょう。
横タッチの多い画面は安定感と広がりのある、キャンバスを横にして描くことが多い。
バランスはいいが、安定しすぎて面白みに欠ける。そこでそのような場合はキャンバスを縦にして
描いてみましょう。広い空、広い海の構図となりおもしろい構成です。
縦の画面構成で地球の重力の関係上、樹木や建物などは垂直に立つが、そのために地面についた根や
土台など、なんらかの支えが必要です。その支えは横タッチです。
単独で不安定に見える縦タッチは横タッチを上手に使用して安定感を出しましょう。影や草むらの
横タッチで地面の位置を示したり、地平線を加えるとバランスが良くなります。

風景画の描き方 その19 風景画の基本 横タッチ縦タッチ

初心者が間違いやすい描き方のタッチ。
川や道をその流れに沿ったタッチで描く、あるいは海岸の岩のある場所で波の形を見て、その通りに描いて
しまった。これは思い込みです。これが折角の絵を台無しにしているのです。
おだやかな川や湖などの水面は水平に保っているので横タッチで描く。
特に岸に近い部分ははっきりした横タッチを使って水平方向を強調する。
海面も広がりを持った水平面なので横タッチで描く。白い波も基本は横タッチ、岩は縦タッチ。
あくまで風景画の基本は横と縦タッチにあります。
自然は地球である広大な大地と海、宇宙の果てまで無限に広がる空から成り立っています。
ですから空間の水平面の広がりを表す横タッチが風景画の最初の基本となります。
縦横ではなく横そして縦です。
ゆるやかに流れる川の水面は、横タッチで描く。セルリアンブルーにホワイトとクリムソンレーキを
混ぜて川の色を表現する。
奥の水面は平筆の側面を使って細いタッチを引く。手前の水面はやや太い平筆で幅の広い横タッチを引く。
画面の奥行きは、遠くの山はホワイトを多めに加えたグレーを使って引込ませる。
手前に山があれば、山はやや黒っぽいグレーを太めの平筆で塗り、色とタッチの幅で遠近との差を感じさせる。
中景の樹木があれば、上から下への縦タッチで描く。イエローオーカーにクリムソンレーキを混ぜて木の色
をつくり、色合い調整はウルトラマリンディープやピリジャンを加えた色で描く。

風景画の描き方 その18 固有色と基調色(2)

固有色は対象物のそのもの色ですから、そのまま描けばよい。しかし絵として成立させていくには
基調色と言われる、影の色とか統一感を感じる色とかが重要である。
基調色のレッスン方法として、単色(暖色系、寒色系)で画面に描き出しすると、簡単に基調色
を持たせることができます。単色で風景の形や明暗をつけて、画面に統一感を与えましょう。
例えば素朴な建物を描く時、暖色系の茶色(バーントシェンナ)を単色に選び、形や明暗を
大まかにとる。
茶色で陰影をとらえたら、半乾きの内にそれぞれの固有色を入れていく。固有色が茶色に混ざって
全体に落ち着いた色調になってくる。
それぞれの要素を描きこんで完成させる。描き出しの茶色がほかの絵具と混ざって、つなぎの色が
できる。
強い固有色で目立っている場合でも、絵具の色をそのまま使うのではなく、基調色となる寒色、暖色
を混色するとよい。
例えば建物の影を作る時、壁の影に寒色系のコバルトブルー(+ホワイト)を塗る。
樹木の陰に青を混ぜる。コバルトブルー+ピリジャン+パーマネントグリーンペール
建物の影に暖色系の絵具を混ぜてもよい。
壁の影に紫を塗る。クリムソンレーキ+コバルトブルー+ホワイト
樹木の緑の陰にも使う。クリムソンレーキ+ピリジャン+パーマネントグリーンペール

風景画の描き方 その17 固有色と基調色(1)

描く対象をそのままの色で個々に再現しても、統一感のある画面作りはできません。
固有色とは、リンゴの赤、レモンの黄、ブドウの緑など、それぞれが持っている色を言います。
絵を描く時は、固有色をうまく絵具の色に置き換えて表すのが基本ですが、固有色だけにとらわれた
表現をすると、対象の中のそれぞれが互いに主張し合い、画面が混乱します。
そこで影の色を工夫してみましょう。
固有色表現といっても影色を寒色系と暖色系にするかによって、2種類の表現が可能である。
それによって画面の中に統一感を持たせることができる。
これを画面全体にあてはめると基調色の考え方になる。
風景において色とりどりの固有色を持った家や木々も影色を工夫すると、互いに調和させることが
できる。
基調色は大きく寒色と暖色に分ける。
季節や題材によって、画面全体を支配している基調色は変化してくる。
夏と冬は寒色系、春や秋は暖色系を基調にすると、季節感と同時に統一感が得られる。
海や夏山はブルー系が合い、秋の紅葉は赤系になるだろう。都会の風景をやや無機的に表現したい時
はブルーやグレー系にするとよい。
緑の固有色を持つ山や草原でも、暖色系の色を使うと春らしいほのぼのした雰囲気になり、青味の
寒色系にすると、さわやかな夏の景色となる。
空、地面、山、水、建物、木々などの要素を好きな基調色で描いてみましょう。

風景画の描き方 その16 空気遠近法

空気遠近法とは大気が持つ性質を使用した空間表現法です。
戸外で風景を眺めていると、遠景に向かうほどに対象物は青味がかって見え、又同時に遠景ほど
輪郭線が不明瞭になり、対象物がかすんで見えます。
こうした特質を使用して空気遠近法では遠景にあるものほど形態をぼやかして描いたり、色彩を
より大気の色に近づけるなどして空間の奥行きを表現します。
遠くのものは空気の層の影響を受け、はっきり形が見えないので光やカゲとして色彩で表し、空気に
溶け込むように描く、山の輪郭も遠方の山ほど大気の中に取り込まれるように薄れていくように
表現します。
ルネッサンス期においてレナルド、ダ、ビンチも既にこれを取り入れています。当時遠近技法として
線の消失点への収束や遠くのものほど小さく見せるなど、奥行きを表現する線遠近法がありました。
しかし戸外の情景を描く場合、遠景を平面の画面上で表現する際には線の効果だけでは十分ではなく
色彩の効果が必要であることをレオナルドは認識していました。
ここで初めて空気遠近法という技法が確立されたことになります。
もう1つの遠近法に色彩遠近法があります。
物理的な遠近法と空気遠近法そして色彩遠近法の3つの遠近技法を画家は通常意識しながら作品を
描いていくわけです。
色彩遠近法は要するに、後にあるものは青に、前にあるものは赤か黄にすることで、前にある物体は
自分に近づいてくる。奥ににあるものは遠ざかっていく、という視覚作用を使用した心理的錯覚を
おこさせる現象を使用した画法です。

風景画の描き方 その15 風景画は中景がポイント

風景画は見えない空間を描く絵です。
遠近感を表現することは風景画の基本です。
そのため、遠近感を効果的に描くためには、ちょっとオーバーなくらいの距離感の演出が必要です。
今までにも何度も出てきた遠近法の遠景、中景、近景と言う言葉、この3つの距離感をしっかり表現
することにより、絵に情感が生まれ、ドラマが生まれ、魅力が生まれるのです。
遠景はタッチを弱くして周囲に溶け込ませ、中景はポイントとなるために描きこみが必要。
近景はタッチも強く置くが、中景ポイントを壊さない程度にすることが大事。そのためにタッチが
大きい場合は色の彩度を抑えるとか、タッチを広くつないでシルエットにするとよい。
中景をしっかり描きこんで、これを基準とします。
その視点から見て、遠景と近景の距離感を強調します。
基準となるものを設けて、前後を調整していくのが遠近感を表現する簡単な方法です。
近景を強調することで遠近感が出てきます。
その対比として中景、遠景と離れていく程、明るく弱くなり遠景は最低限の淡い色とすべきです。
絵の広がり、スケール感が出てきます。
5月の棚田を思い浮かべてください。
実際には、山、里も緑一色ですが、近景、中景、遠景の距離感があります。
それぞれの緑は色相、明度、彩度が変わっています。
遠近感も微妙な色彩の変化、濃度の変化で表現するからこそ絵の表現に広がりが出てくるのです。

風景画の描き方 その14 風景画の要素

風景画は空、地面、山、水、木、建物の6つの要素から成り立っています。
描きたいテーマによって、そのテーマを中心に描くのが変わってくるのは当然でしょう。
絵の中の全てのものを均一に描くと、焦点のないごちゃごちゃした感じになてしまいます。
重要なのは上記6つの要素の配役です。
主役は、脇役は、つなぎ役は、と言う風に考えながら配置し、描くのです。
主役は固有色で細部までもしっかり描く。
脇役は主役を引き立たせるために、控えめに描く。
つなぎ役は背景の森とか、草原とか、空と雲とか、流れのある川とか道。主役を引き立たせて
脇役とジョイントする役目である。
風景画を描く場合は画面の中に遠近中という構成を意識して、そのどの部分を主役としてまとめ
上げていくか、極めて重要で、あらかじめ見極めてから制作を行う必要がある。
景色にはそれぞれ、遠近中、どこにポイントをおいて描くかによって出来る絵がある。
風景には様々な要素があります。ただ草花を描くとか、動物だけを描く、といった場合より困難
を感じることが多い。
なぜなら風景とは異なった多くの要素が集まって出来ているからです。
風景の写生は簡単な場所から初め、徐徐に複雑な場所を描く。最初から難しいものに挑戦しても
結局、自分の力不足を感じることになって、モチベーションが下がることになる。
主役、脇役、つなぎ役がはっきり分かる単純な風景から入っていくべきである。
その修練の多さが、やがて複雑な風景でも、何が描きたいか主役は何かが分かる画面構成ができる
ようになる。

風景画の描き方 その13 天候と場所

風景を描くには晴れが一番と思われがちですが、実は写生に最適な天候は曇りです。 曇りの日に野外で描くと、光の変化が比較的に少なく、長時間制作ができます。 もちろん曇り空を青空に変えて描いてもかまいません。 そこで気をつけたいのは、空を青く塗るだけでは晴天の絵にならないということです。 晴れと曇りの違いを空の青さの程度だけでなく、画面全体の明るさ暗さや色調のコントラストの差で表す のがコツです。 晴れの日はコントラストが強いので空を明るくするだけではダメです。遠景はホワイトを混ぜて遠景の建物 などのシルエットを浮き出させる。はっきり見えるのでブルーを加えてやや立体的に描く。 暗い幹などは幹の奥を明るい色にして、明暗のコントラストを強くする。 曇りの日はコントラストが弱い。空をグレーにするだけではダメです。 遠景の建物などは立体感を付けず、ややあいまいにして、青味も弱くする。 暗い幹なども明暗さを付けないようにする。

場所 折角スケッチにいくのだから、その場所がどこであるかわかる絵にしたいものです。 描きたい場所に見られる特徴や、持ち味を生かした構図を考えて写生するとよい。 又、同じ場所を何度も描くことを推奨します。 同じ場所ではあっても、季節や天候によって全く違った風景に見えます。構図の取り方、彩色の仕方、 質感などが変わりますので、勉強になります。

風景画の描き方 その12 時刻の移り変わり

情景を描き分ける場合、朝、昼、夕の光と空気の変化を表現しましょう。 早朝 あさもやによって空気がゆらぎ、光が弱くなる。黄色系で柔らかい光を表現する。 空   コバルトブルー+クリムソンレーキ+ホワイト+ウルトラマリンディープ 岩、海 ウルトラマリンディープ+クリムソンレーキ+ホワイト+ブラック(少量) 昼間 太陽が高い所にあるので、水平面が明るく、垂直面は暗くなる。空気が澄んでいるため、明暗のコトラスト の強い表現になる。岩は青と褐色とピリジャンを混色する。 空   セルリアンブルー+レモンイエロー+ホワイト 海   セルリアンブルー+コバルトブルー+ホワイト+ピリジャン+クリムソンレーキ(少量) 夕方 残照が強く、低い位置にある。暖色系の強い光を表す。岩は青と褐色にイエローオーカーを混色 空   パーマネントイエロー+レモンイエロー+バーミリオン+ホワイト 海   パーマネントオレンジ+レモンイエロー+ホワイト

屋外スケッチの注意事項 キャンバスに直接日光があたらない場所を選んで描こう。画面に光が当たると、反射で明るく見えて 絵具の色調がわかりづらくなる。左肩の方から日があたる角度にイーゼルを置くのが理想的。 安定感のある場所で、立って描くか、座って描くかを決め、キャンバスが水平になるように高さを調整 する。

風景画の描き方 その11 季節の描き方

風景画を描く時は季節、時刻、天候、場所によって色使いが異なります。
まず季節です。
色使いを工夫すれば、四季折々の変化に恵まれた風景を情感豊かに描く事ができます。
春の空の場合 セルリアンブルー+ホワイト+クリムソンレーキ
セルリアンブルー+ホワイト+レモンイエロー(少量)
夏の空の場合 セルリアンブルー+ホワイト+ピリジャン(少量)
コバルトブルー+ホワイト+ピリジャン+クリムソンレーキ(少量)
秋の空の場合 セルリアンブルー+ホワイト+レモンイエロー
ホワイト+クリムソンレーキ
冬の空の場合 ブラック+ホワイト+コバルトブルー(少量)
ウルトラマリンディープ+ブラック+ホワイト
春の木々(若葉の黄緑) レモンイエロー+パーマネントグリーンペール
レモンイエロー+パーマネントグリーンペール+ピリジャン(カゲの緑)
夏の木々(青葉の青緑) ピリジャン+パーマネントグリーンペール
ウルトタマリンディープ+ピリジャン(カゲの深緑)
秋の木々(赤黄の緑)  パーマネントオレンジ+パーマネントグリーンペール
パーマネントイエローライト+パーマネントグリーンペール
冬の木々(落葉した木々と常緑樹)
ウルトラマリンディープ+バーントアンバー
ピリジャン+パーマネントグリーンペール(少量)+クリムソンレーキ(少量)