構図 その1 構図って何

構図とは基本的に自分が描きたい絵のテーマがはっきりわかるように画面の中にモチーフを配置することです。

よく聞かれます、いい構図ってどんな構図?

そんな構図はありません。
だからいい構図ってどんな構図、ではなく狙いや目的が先にあって、それをよりよく見せるため、演出するために取捨選択して切り取られ、画面に残ったものが結果として、いい構図なのであり、自分の意見も何もない状態での漠然としたいい構図、というものは存在し得ない。

確かに構図によって、その絵の価値の半分以上が決まってしまう、と言われています。極めて絵を描く上では重要な要素です。

例えば風景画の構図の取り方を考えてみましょう。風景はとても広いのでどこを描いたらいいか迷います。

自分が一番描きたい場所を中心に風景を切り取りたい。どうしたらいいのか。

まずは1つのパノラマ的な風景を見たとき、その中で一番描きたいものは何かをしっかり考える。

山とか、湖とか建物とか、欲張ってしまうと絵がまとまりません。

このように風景画においても先に構図があるのではなく、画家の意思が、描きたいと思う対象を明確にすることが先で、それが決まったとき、決まった切り取り場面が構図なのです。

ちなみに風景の切り取り方は両手の指で四角を作って覗くと簡単に構図が取れます。
そして遠近法を充分に考慮してください。遠景、中景、近景の配置の仕方です。

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構図 その2 構図は絵を描く手段

構図にはいくつかのパターンが存在します。
例えば美大の受験するとき、受験をクリアするためにある決まったパターンがあります。

そういう画一的なものが作品として発表されたときに人の心に響くかというとなかなか難しいでしょう。

やはり誰にもできないものを作り出すからこそ価値があるのだと思います。
構図は単にバランスが良いというだけでは何にもなりません。
その絵が出来上がったときに、絵を見る人達の心に引っかかるかどうか。相手に明快な印象を与えることがげきれば、描きたいテーマも相手に伝わるはずです。

構図だけどんなに考えても、画面が単なる色や形のパズル合わせ的なもので終わって
しまえば意味のないことです。
構図は絵を描く手段ですから、絵が最終的に良ければいいのです。
画家にとって描くモチーフ、対象が重要です。
モチーフ、テーマありきです。それを良く見せる、相手に伝えるための手段として構図があります。

描きたいものがあれば、必然的に構図は決まってきます。

本物を見て描きなさいとよく言われます。それはとても大事なことです。
美術品として評価のあるもの、人に大切にされてきたものには、そのもの自体から強いイメージが生じます。

そういうものは見ていると自然に描きたいという思いを起こさせてくれます。
モチーフから得る力というのは画家にとって本当に大きいものです。

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構図 その3 構図についての考察

最近ではインターネットで動画を見ることができます。そこで2時間程度でモデルを描くパフォーマンスが行われていました。
その映像に映った彼らを見て思ったのは、早く描くことが目的になってしまって、まるで作品が言い訳のようになってしまっているということでした。
作家としての哲学や個性、価値観はどこへ行ってしまったのでしょう。
それぞれの作家のアトリエが同じでないように作品にもその作家なりの考え方が出てきてしかるべきで、それがなければ作品としてつまらないものになってしまいます。
モチーフをよく伝えたいという思いで、構図は自然と決まります。
洋画家が一番最初に構図として習うのは、画面を水平に走る横の線です。
しかし単純にまっすぐ横に線を走らせただけでは、画面におもしろみが無くなってしまうことがあります。

絵画でバランスを取る方法に2種類あります。

一つは破綻させないように描くこと。
もう一つはやじろべえのようにわざと揺らす方法です。あえて揺らぎを与えて、一見不安定にすることで、画面に動きを作り出すことも必要です。

また、幾何学的に画面を分けて構図を決める方法もあります。

画面の二分の一、四分の一で分割したところに必ず何かモチーフを配する。だからと言って良い構図になるとは限りませんが、基準があった方が描きやすいという画家は多い。

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構図 その4 構図は画家の感性

構図は画家の感性です。花の場合だったら自分でデッサンしたものを、画面の中にどのように入れたら空間が活きるか、自分が感じる花の気持ちがその四角い世界で最大限に活きるためにはどうしたらいいか。それは描き手のいわゆる感覚、感情、センスといったものがそのまま出てきますから、あまり無理をせずに、こうしたいと思ったことをするのが一番です。
構図の分析の一つに黄金分割がありますが、画家が最初からそれを意識して描いたというよりは、人間の今持っているとても気持ちの良いバランスがそこに表現さえているということだと思います。

ですから絵を見ていて気分が悪いなと思ったら、それは気分の悪い構図なんです。
もし、気分が悪い、気持ちが悪い、嫌な感じというのを描きたいのだとしたら、そういう構図を作らなければならないわけです。
風景の中に木を描く時に、木はもう少しこちらにあった方がいいな、とか自分で作っていきます。
それは勘です。空きがこれくらいだったら、地平線はこれくらいというように。
いわゆる視点の置き方によって画面は変わってきます。
日本の伝統的な描き方は絵巻にありますように、いわゆる平行です。
平行に見ていく。遠いものを小さくしてしまうと見えない。
それだったら全部に焦点を当てていく。掛け軸の山水画がそうです。
前景、中景、後景と3つに分けて、どのようにヴァルールを考えるかと言うと、濃淡を使います。
それによって遠くに行っているように見えるわけですから、目の錯覚を使用して絵を描いているわけです。

平面の2次元のところに3次元的なものを描かねばならないわけですから、当然それを認識できていないと絵は破綻します。

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構図 その5 構図の1つの手順

構図の1つの手順として、例えばミカンの形がおもしろいから描きたいな、と思ったとき。
そのモチーフを色鉛筆でデッサンして、小さいものですがアイディアスケッチを作ります。
あらゆる向きからモチーフをデッサンして、それをタブローの画面にどのように入れるかを考えていきます。
デコボンを5つ横に並べたとします。デコボンは枝付きです。
丸い塊と横に伸びる枝がおもしろいと思える構図を作っていきます。
その面白さはリズムです。意外と感覚的ななものです。
とは言っても画面に向かうときには頭の中にその構図が出来上がっていなければなりません。
だからそれを絵にするときは、真っ白いキャンバスにすっと描いていけるわけです。
そのために色々な方向からデッサンしなければならない。デッサンが一番大事です。
手を動かして相当の数のデッサンをしている内に構図が頭の中に出来上がっていくことが分かります。
この段階で画面の大きさも決めます。キャンバスに下塗りした後、鉛筆で軽くあたりをつけて描画に入ります。すでに頭の中にイメージが出来上がっているはずですから、どんどん描き進めていきます。ここであまり何回もやり直しをしてはいけません。やり直しは画面が固くなり、つまらないものになってしまいがちです。
どこに何を配置するかもあまり考えすぎないで、こうするとおもしろいな、というバランスとか勘で決めていけばよろしい。

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構図 その6 構図のこと

構図の捉え方は画家によって実に様々です。
ある具象絵画の画家は次のように言っています。
私は具体的なものを題材にして絵を描いている。誰が見ても何が描かれているか分かるような絵ですが、それはものの形やものを取り巻く状況を説明するためではありません。
目にみえるもの、形あるものをきっかけとして、目に見えない何かを描きたい。
日常の中で、目にする様々なもの、考えること、そして触れ合う人々。それら現実のの中でふとした瞬間に実感する、言葉では掬えない抽象的な、しかし満ち足りた感覚。
見えないけど確かに感じたその感覚は存在へと繋がる、誰もが共有することのできる人間本来の根本的な感覚ではないかと思います。
私にとって構図を考えることはキャンバスという限定された空間に見えない何かを書く為の必要かつ重要な要素で、どのような構図にするのかということから、絵を描く作業が始まります。
描く手順を決めているわけではありませんが、描く絵のイメージが決まると、まず小さなスケッチブックにそのイメージを描いていきます。
主題になるモチーフだけ描くのではなく、モチーフを矩形で囲って、主題の形と、それを描いたことによって見えてくる余白の形とのバランスを考えながら画面に入れる大きさや視点を決めていきます。構図が大まかに決まるとキャンバスを作ります。比率はスケッチブック上で決めた矩形と同じですが大きさはイメージによって異なります。自分に合う大きさを探りながら決めていきます。
そしてキャンバスに描き始めますが、スケッチブックの構図をもとに描きますが、その通りには描きません、参考程度です。新たな形を手掛かりにして絵と自分との対話が始まるのです。
自分の気持ちとぴったり合う形や色になるまで筆を動かしていますとやがて自分の構図が見えてきます。

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構図 その7 構図の基準

絵を描く上でモチーフの構図によりキャンバスの大きさを選定することになります。
キャンバスの大きさはF,P,Mといった記号で表示されています。
しかし、これは決して絶対的な形ではありません。
先にキャンバスの大きさありきではなく、あくまでもモチーフが主役です。
自分のモチーフに合う規格のキャンバスがなければ自分でキャンバスを自由に作ればよろしい。
しかしこの規格となっているキャンバスの縦横の寸法比、つまり黄金比は意味があります。
黄金比は長い歴史と経験則から導きられた、極めて合理的な寸法比です。
黄金比は1:1.618です。
但しこれは厳密なものではなく実際に売られているキャンバスは比率が異なっているものが多くあります。基本的に土台になっている比率で参考程度に見てください。
キャンバスMは黄金比そのものです。縦1に対して横は1.618です。
キャンバスFはM型を縦に2つ並べた形です。分かり易く言えば縦2に対して横が1.618になります。
キャンバスPは縦を1としてできる正方形の対角線を半径とする円弧を引いてできた長方形です。
縦1に対して横は√2となります。
誰でもいたずら描きするときはFPMといった規格を意識はしないでしょう。
絵を描いてみたいと思って画材屋に行くとキャンバスのこの記号を見つけることになります。
このキャンバス型といわれる規格がどのようなものか知ることに意味はあるのですが、現実には避けて通れませんので、絵を描くてがかりとして一応認識しておいた方がいいでしょう。

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構図 その8 構図のはなし

絵画における構図はすごく身近なものです。学校の美術の時間で最初に習うのは構図です。
構図は絵画の表現手法の中では重要な部分です。
人間の感覚として本能的なものかもしれませんが、バランスのとれたもの、あるいは左右対称
なもの、を好む傾向にあります。
気持ちが安定して落ち着きます。
感覚的に絵を描こうとすると、無意識に描きたいもの、モチーフを真ん中に置いて描こうと
します。あるいは左に置いたらバランスを考えて右に何かを置いて描こうとします。
右に何かを置こうとすることは自然な感覚です。
このような左右対称、バランスのよい絵がいい構図と思いますか?
画面の真ん中に描きたいモチーフを置くと実はつまらない構図になりがちです。
見る人にとっても理解し易い構図なので、絵を一瞬見ただけで安心し、満足してしまうのです。
絵画の歴史の中にもモチーフを中心に置く作品はいっぱいあります。最近の美術展覧会に行っても、そのような作品は多く見受けられます。
それらはそれで絵の目的があって中心に置かれています。
しかし、基本的には絵を描く場合は左右対称の構図は避けた方がよろしい。
美術館に行ったとき、1つの作品を何秒見ていますか。
作者の表現したいモチーフが絵の真ん中にあると、見る人は一瞬で理解してしまいます。
そのため絵を見てくれる時間が少ないのです。
つまり見る人の視線を逃がさないように、なるべく長くその絵に留まってくれるような構図がいいのです。
モチーフが中心ではなく、左右対称でもなくバランスが崩れた絵は見る人に視線が絵の中で遊びます。
分かったと思うまで時間がかかります。鑑賞する時間が長くなります。
これがいい構図と断定は出来ませんが、こういう描き方が絵としてはおもしろいのです。

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構図 その9 基本の構図

構図は絵を描く時の重要な要素であることを今まで何度も述べてきました。
構図は絵画だけでなくデザイナーや写真家にとってもとても大事なことです。
それは絵画と共通している部分がかなりあります。
これから述べる基本的な構図はデザインや写真とほとんど同じで共通しています。

三角構図

もっともよく知られた構図です。下部が広く上部が小さい。
極めて安定感のある構図です。下部がどっしりして上部を支えている構図です。この構図の作品は大変多い。

逆三角構図

あえて構図の1種類に加えてみましたが、一般的にはこの構図で絵を描く人は少ないでしょう。
見る人に不安を与える不安定な構図です。あえてそうした見る人に不安な気持ちにさせる絵を描く時にはいい構図です。

日の丸構図

中心部にモチーフの主題をどーんと置く構図です。主題がモチーフが非常に強く出ます。
主題の周りの処理が難しくなります。
1点豪華主義みたいな描き方となります。

左右上下対象構図(シンメトリー構図)

古代からこれも良く使われています。逆さ富士のように描けば上下対象、水鏡のように描けばこれも上下対象、トンネルの入り口を真正面から描けば左右対称です。

対角線構図

水平な横線に合わせた構図ではなく手前から右の左に斜めに配置した構図のことです。海岸線を斜めに描く場合が多いですがそれがこの構図です。

三分割構図

これもよく使われる構図です。対象のモチーフを縦に三分割、横に三分割、そうすると囲むという字ができます。交点が4つできます。この交点近くにモチーフの重要な部分を配置すると落ち着きのある安定的な構図となります。ちょっと慣れないと難しいかも。

他にもたくさんあります。構図の基本をわざと外す場合もあります。これは作者の自由です。しかし基本として知っておくことも大事です。

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