人物画の描き方 その1 構図をとる

人物をどこまで入れるかによって、キャンバスの大きさが決まります。 まず、人物をどの様にキャンバスに入れるかを考えます。 6号、や8号では全身像は小さ過ぎて、入らないでしょう。 胸から上の胸像なら6号くらい、膝から上なら20号くらい、全身を描きたかったら30号以上は 要るでしょう。 次はモデルのポーズを付けます。 モデルは最初は身近な家族がいいでしょう。慣れてきたら、人物画教室に入ったり、友達に依頼 したり、あるいはモデルを雇ったりします。 自分の顔を鏡に写して、自画像を描くのもおもしろいでしょう。 部分デッサンで自分の手足を色々な角度で鉛筆デッサンをすると、基礎力向上のために、良い方法 です。 人物ポーズは顔の向きや、体の向きなどの方向を変えることによって絵に動きが出ます。 絵に安定感を与えるには前にも述べましたが三角構図によると良いです。 ポーズを決める時、モデルの意見も聞きましょう。長時間同じ姿勢を保つように依頼するわけです から無理のない姿勢でないといけません。 モデルには一定間隔で必ず休憩を入れましょう。同じ姿勢を保つということは結構疲れます。

そして次は目の高さを決めます。 目の高さによってモデルの輪郭が違って見えます。 モデルを見下ろす位置ならば、頭から脚に向かって徐徐に小さくなります。 見上げる位置ならば、脚から頭に向かって小さくなっていきます。 見る位置によって遠近が変わります。

人物画の描き方 その2 人物に当たる光の方向を考える

人物を描く時は光についても考えます。光の当て方によって人物の見え方や印象が変わってくるから です。 まず光源ですが、自然光が理想的ですが、無理な場合は、光の方向も調整できる室内照明を使用 しましょう。 次に明暗をよく見ます。 光を当てることによって人物に明暗ができます。この明暗を描くことによって、絵に立体感が生まれ ます。 モデルを良く見て、明るいところと暗いところを観察しましょう。 人体は想像以上に凸凹があります。丸みがあるため、その凸凹が掴みにくいのです。 モデルを見るときは正面だけでなく、横から後から色々な角度で見たりしますと、その人体の形が 掴みやすく、絵が描きやすくなります。

当然光の当て方、角度によっても印象が変わってきます。 明るくさわやかな印象を与えていたのに、光の角度を変え、暗の部分を多くして見ると陰気な感じに なってしまうということもあります。 色々な角度に光源を動かしたり、モデルに動いてもらったりして、自分のイメージを掴みましょう。 初めは前面から光を当てて描くことがいいでしょう。 真正面から当てた光では暗いところが少なく、形が掴みにくいので、斜め前からがいいでしょう。 慣れるに従い、暗部を少し多く出るような位置に光源を置くと、めりはりのある絵ができます。

人物画の描き方 その3 人物デッサン

最初に人物デッサンを行いますが、ここで使う道具は静物画の時と同じで、木炭、鉛筆、絵具です。 鉛筆は2B-4Bの軟らかいもの、絵具は好きな色で描けばよいですが、イエローオーカーや バーントアンバーなどで薄く溶いたもので描いてもいいでしょう。 デッサンは細部を気にしないで大まかに捉えていきます。イメージ通りにキャンバスに当初考えた 人物の構図を入れ、人物の大きさや位置を考えます。 始めに頭の位置や大きさを決めますと基準ができるので他の部分が描きやすくなります。

人物画は静物画や風景画のようにモチーフをカットしたり付け足したりができません。 ごまかしができないのです。 そのためモデルをよく観察して、人体がどのような動きをしているかを捉えることが重要です。

人体には基本的な構造があります。 顔について言えば、目の高かさは頭の天辺から顎の先までの中間になる、とか、下唇の位置は 鼻の付け根と顎先の中間になる、とかです。 しかし、人には個人差があります。モデルを見るときは常に正面から見ているとは限りません。 基本的な構造にあまり捉われないで、モデルをよく観察して忠実に描くことが大切です。

手足は結構大きいのです。 手足を小さく描いてしまいがちですが、結構大きいのです。手の長さは前髪の生え際から顎先まで の長さ、足の裏の長さは手首から肘までの長さと同じ、と言われています。 座りポーズなどで手足が顔より前に出ているときは、さらに大きくなります。 不自然にならないよう注意が必要です。

人物画の描き方 その4 色の塗り方

最初は絵具を薄く溶いた、おつゆの状態で下塗りします。 細かく描く必要はありません。筆を使って大まかに描きます。 細い筆でチョコチョコ描いても、いきいきした絵になりません。太い筆で面を描くように塗って いきましょう。 この時、人物をよく観察しながら明暗も入れていきましょう。 明るさは細かく分ける必要はありませんが、3-4段階くらいに分けて塗った方がいいでしょう。 明るい部分から暗い部分への変化を描写することで、顔の凸凹や衣服のしわなどが表現でき、 質感も出すことができます。

次は人物の肌の色です。 肌の色というと一般的にはジョンブリアンという色がよく使われます。 この色だけに頼っていては本当の肌の色は出せません。 肌の色は人によって個人差があります。モデルをよく観察して肌の色の変化を捉えることが大切 です。 ピンク色に見える部分、茶色に見える部分、影の部分では灰色に見える部分などがあるでしょう。 その部分によって赤か黄色、茶などを混ぜていきます。明るさの調整は白を混ぜます。 陰の部分は調子を見ながら青や緑などを混ぜるとよいでしょう。

仕上げでは顔や肌、コスチュームなどの形や質感を表現するために細部も塗りこんでいきます。 モデルと比較して人体の形や手足の方向、目、鼻、口、などの位置関係、コスチュームのしわなど が正しく捉えられているかを確認します。 色を塗りながら、時々キャンバスから離れ、モデルと比較してみてください。