油絵の技法 その14 点描2

点描は1880年代半ばころ、フランスのスーラによって確立されています。
点描はファンゴッホをはじめ多くの画家たちに影響を与え、やがて抽象絵画への流れも
出来上がっていきました。
モネやシスレー、ピサロら印象派の画家たちは移り変わる自然の様子を細いタッチで
捉えていく等触分割を特徴としました。
そこには混色しない純粋な色を使うことで、キャンバスをより鮮やかに見せるテクニック
がありました。
1886年の第8回印象派展でスーラとシニャックは新印象派と名付けられました。
当時最新の視覚と色彩の理論を取り入れたスーラは純粋な色の点をキャンバスに置いていく
ことによって澄んだ色彩と光の表現を手に入れました。
シニャックは若くして夭折したスーラに代わって新印象派の理論化に努め、世代を超えて
多くの画家たちに影響を与えました。
2人にとって点描は調和を実現する技法でした。
1886年オランダからパリにやってきたファンゴッホはそこでスーラやシニャックの
点描作品を目にしました。
彼は点で描くそのものよりも、そこで用いられた補色の効果に魅了されました。
そうした色彩の力を最大限に活かす方法として、ゴッホは独自に点描技法を生み出して
いきました。
その後、点描はフランスからヨーロッパ全土に伝播していきました。
ベルギーやオランダではファンレイセルベルヘ、バンドベルドトーロップが点描を取り入れ
ました。
三原色と黒い線による抽象絵画で知られるモンドリアン。
彼もまた、1900年代初めにトーロップとの交流を通じて新印象派の理論に触れています。
それがきっかけとなって色彩の純粋性を追求することになった。

油絵の技法 その14 点描(ドライペイント)

絵具を細目の筆先に盛り付けて塗るというよりは置く感じで厚めに載せます。
絵具は混色した後、重なった顔料同士が光を奪い合い極端に明るさを失ってしまうことから、
色を混ぜずに画面に並べ、見る人の網膜で混色するように考えられた技法です。
日本で最初にこの技法を取り入れた画家は岡鹿之助です。
鹿之助は自分の絵のマチエールが西洋絵画のマチエールに比べると劣ることに悩み、試行錯誤
の結果、到達したのが、彼の画風を特徴づける点描画法であった。
西洋近代絵画史において、点描画法を用いる代表的な画家はジェルジェスーラであるが、
当時の鹿之助はそのころまで無名であったスーラの作品は知らなかった。
スーラの点描はキャンバス上に並置された異なった色の2つの点が見る人の網膜上で混合して
別な色を生み出す、という視覚混合の理論を応用したものであった。のに対して、
鹿之助の点描はむしろ同系色の点を並置することによって、堅固なマチエールを達成しようと
するものである。
鹿之助はこの技法を用いて静けさに満ちた幻想的な風景画(雪景色が多い)を多く残した。
岡鹿之助は1898年生まれ、1919年東京美術学校西洋画科入学、
1964年芸術院会員、1972年文化勲章授与、1978年没 享年79歳。

油絵の技法 その13 グレージング(グレーズ)

一種のボカシ画法です。
油絵具の透明感を生かした技法で、透明水彩の色作りと同じです。
色相の異なる色をグレーズすれば混色と同じように色味が変わります。
黄色に青をかければ黄緑になる。
類似色をグレーズすれば色が深くなる。
オレンジの上に赤であれば鮮やかな深紅色になります。
下の色を透けさせて視覚的に混色するわけですから、後からの色はごく薄くして
透明度を高くしておきます。
下の色が乾いてから塗ることが一番のポイントです。
注意しなくてはならないことは、
グレーズの色面をマチエールの異なる画面上のポイントとして残したい場合を除いて
グレーズした部分をそのままにしておかないことです。
周りの絵具との境目を軟毛の筆で馴染ませたり部分的に描き込んで仕上げることが
必要です。
進め方のポイントはどんな色調に仕上げるか、完成の色のイメージをあらかじめ持つ
ことが必要です。
グレーズを繰り返せば色調は濃くなっていくわけですから、鮮やかに濃くしたいのか、
渋く濃くしたいのか、下の画面の色味も違ってくるし、グレーズする絵具の色も違います。
特に明るい部分はグレーズで明るめにしておいて、最終的にグレーズで明暗のバランスを
とっていくことがポイントです。

油絵の技法 その12 着色グラウンド タッピング インパスト

着色グラウンド
キャンバスに下地の色を塗って、下地の色を残しながら描く技法。
タッピング
スポンジや筆以外の物に絵具を付けてタップしながら描く方法。
又は、絵具をたくさん作り、筆に油を少量付けて、叩いて、ぼかしを作る技法。
部分的にタッピングして複雑な効果をねらいます。
インパスト
厚塗りのことです。絵具を油で薄めないで、厚く盛り上げるように塗る方法です。
力強くはっきりした色が出ます。
油絵の画法の中では代表的な技法です。
厚塗りですが、筆で描く方法とナイフで描く方法とがあります。印象がかなり異なります。
14-15世紀の油絵は薄塗りで色を重ねていく技法が中心であった。
19世紀頃から絵具のチューブが商品化して色数が増加して、厚塗りが積極的に行われるように
なった。
グルーズ(薄塗り)やスタンブル(ぼかし)に対する言葉である。
インパストの効果として、タッチの凸凹が浮き上がり、レリーフ状の効果を出す。
タッチの流れが画面の構成や空間をイメージさせる。
ゴッホのひまわりのある静物は樹脂の多いとき油を使い、粘りの強いタッチで描いている。
インパストの問題点は亀裂と皺が出易いことである。
揮発性油、シッカチフの多用、未乾燥下での重ね描きはしないことが必要です。

油絵の技法 その11 アラプリマ

アラプリマはイタリア語です。
あらかじめ作られた下地の上に透明な絵具を何層も塗り重ねて仕上げていく古典的な、
伝統的な方法と異なり、油絵具を地塗りなしに直接画面に塗りこんでいく方法をアラプリマと
言います。
画家が自由に色を画面に置いていく方法で筆のタッチや絵具の盛り上がりなどを画面効果として
生かす方法です。
絵画に自然らしさを求めた印象派の画家が採用した19世紀後半から筆も柔らかいものから
硬い豚毛の太筆が使用されるようになった。
1983年から1994年にかけてのアメリカBBSテレビの番組ポブの絵画教室は稀有な
長寿番組であった。このポブ(ポブロス)は古典的なアラプリマ画法を改良を重ねて、
ポブロス画法という画法を考案した。
未乾燥の塗膜に描写する方法やぼかし込みの多用、油分の多い絵具を下塗りすることによって
短時間に仕上げることができるようにした。
筆やナイフの特徴的な使用により今まで描いたことがない人でも油絵が描けるようにした
ポブロスの功績は大きい。
ポブの絵画教室は日本でも1990年後半からNHK-BSで放送され人気を集めた。他にも
メキシコ、韓国、台湾、イギリス、ドイツ、オランダ、トルコのテレビでも放送された。
現在普及しているアクリル絵具のジェッソを下塗りに使った方法はロスの考案である。

油絵の技法 その10 ドライブラシ

ドライブラシとは絵具をそのままか、硬めに溶いたものを筆につけ、キャンバスに塗ったり、
こすりつけたりすることによって、かすれの効果を得る方法。
普段、絵を描く時は常に絵具を十分含ませて描きますが、一旦筆に含ませた絵具をパレットや
紙の上でほとんど拭き取ってしまい、筆に残った生乾きの絵具をこすりつけるように描くのが
ドライブラシです。
絵具が筆に十分付いていませんから、その状態で描くと筆が乾き、線がかすれたようになります。
わざとこういう効果を狙ってデッサンのようなタッチを生み出す技法です。
又、不均衡に塗った乾き気味の絵具の隙間から下層をまばらに見せる技法とも言えます。
方法も色々ありますが、乾いた硬めの筆に溶き油をほとんど加えない絵具を取り、軽く布で
ぬぐってから、乾いた層の上を軽くこするように塗ります。筋状の跡を残すには、力を抜いて
筆の下方を持ち、親指で毛を押さえるようにするとうまくできます。
この独特な技法のドライブラシはアメリカのアンドリューワイエスによって考案され、
他にもEシーレも多用していますが、ワイエスのそれはマイクロハッチングのような繊細で
緻密です。
日本国内にもワイエスを尊敬する画家が多くいて、たくさんの美術館がワイエスの作品を収蔵
しています。
ワイエスはアメリカの勲章をほとんど授与されているのでは、と思われるくらいの巨匠です。

油絵の技法 その9 ドリッピング

吹流しの意味です。
絵具を画用紙にたらして、ストローや直接息で吹くと美しい線の模様ができます。
これをドリッピングといいます。
パレットに載せた絵具を筆の水で溶いて、ぽたぽた落ちるくらいから、それよりもっと薄くてもよい、
強く吹きたいなら濃い目に、ゆっくり吹き流したいなら薄めにする。
たらした絵具の真上からぷっと吹けば花のように散り、追いかけるように吹くとおもしろい図案が
できます。
画家のジャクソンポロックは床に広げた支持体に筆やスティックに付着させた液状の顔料を飛散させて
絵を描きました。
この技法通常な絵画のように筆と支持体とが直接触れ合うことはなく、手首のスナップや腕のスイング
を動かせ、顔料が空中に放たれるように支持体に定着します。
顔料のはね散らし、滴たらせ、あるいは流し込む、ということでドリッピング又はポーリングとも
いいます。
ジャクソンポロックはこの技法に際して、エナメルやアルミニューム塗料などの商業用の塗料も使い
絵具の粘性などの各顔料の特性を意識して活用した。
ドリッピング技法は偶然を使用した手法なので、筆で描く手法と違って誰がやってもそこそこに
支持体に表現できる。
かなり乱暴ですが、小学生の作品だって物理的な表面と奥行きの不可思議はそこそこ生み出すことは
できる。
ポロックの絵画は表層的な抽象表現主義を標榜してアメリカの抽象画の文脈に収まっている作品である。
小学生の限らず、他の画家が絶対真似できない境地の画法である。

油絵の技法 その8 コラージュ

コラージュとは貼り付けの意味です(フランス語)
絵具を塗る代わりに色の付いた紙を貼って絵を作ることをパピエコレといいます。
貼ったり、剥がしたり、移動させたり、が容易のため、構図の展開を空想したり、
エスキース作りに応用できます。
作品の構図を決めるときにも使います。
切り立った絵のパーツを紙の上で移動させたり、回転っせたりして最適な配置を考えるときに
よく使われます(エスキース)。
抽象画の世界でよく使われます。
天地や方向や遠近にこだわらず、自由に配置を変えていきます。
色と形のバランスやリズムに思考に専念できます。
絵画におけるコラージュはキュビズム時代にパブロピカソ、ジェルジュブラックらが始めた。
前記のパピエコレに端を発し、主観的構成を持たない、意想外の組み合わせとしてのコラージュ
は1919年Mエルンストが発案した。
主に新聞、布切れ、針金、ビーズなどの絵具以外の物を色々組み合わせて画面に貼り付ける
ことにより特殊効果を生み出すことができます。
現代でも様々な方向で工夫され発展して使われています。
フローラルコラージュという技法があります。
あらゆる植物の枝や葉っぱなどの植物素材を使って紙やキャンバスに張り付け、アート性を
追求する造形の1つの部門となっています。
デジタルコラージュという技法もあります。
パソコンのモニター上で写真素材を切り取ったり、縮小、拡大したりして、それを画面上で
貼り付けていき、イメージ作品を作る技法です。

油絵の技法 その7 フロッタージュ

木の枝とか、石とか、コインなどの表面が凹凸のある物の上に紙を置いて、上から鉛筆
などでこすると、その凸凹が模様となって現れます。
この模様によって描かれた作品をフロッタージュといいます。
使用する紙は比較的薄くて柔軟性のあるものがよく、画用紙などの厚みのあるものは
写しにくいので適さない。
古くから東洋では拓本という技法がありました。
乾拓と湿拓の2種類あります。
乾拓はフロッタージュと同じ原理で、和紙の上に擦りだし用の固形の墨でこすって凸凹を
写し取ります。
湿拓は水分を含ませた和紙の上からタンポでたたき、1度凸凹を浮かび上がらせてから
絵具の付いたタンポで凸面を絵具で彩色します。
魚拓がこれに似ています。
フロッタージュはできた模様は偶発性によるものです。
そこの現れるイメージは見る者の想像力を拡大させる効果があります。
シュルリアリズムのMエルンストが創始者と言われています。
パステル、クレヨン、鉛筆、色鉛筆などを使って凸凹をこすり、写し取ったり、紙を回転
させたり、移動させたりしてして写し取ると、思いもよらないような綺麗な模様が得られます。
マックスエルンストは1900年代のドイツの画家です。シュルレアリズム(超現実主義)の
代表的な画家です。フロッタージュ以外にもコラージュ、デコルコマニーなどの技法を考案
しています。

油絵の技法 その6 デカルコマニー

デカルコマニーとは合わせ絵のことです。フランス語で転写画の意味です。
紙に絵具を塗り付け、それを2つ折にしたり、別の紙に押し付けたりすることで、塗りつけた
絵具を絵具を転写する絵画技法です。
折り目を境に左右対称の絵柄が描けます。
デカルコマニーでは使用する紙や絵具などの素材特性が大きく表現効果に関わります。
紙には表面の平滑性や吸収性などが異なった様々な種類があり、それぞれ特徴のある転写効果を
出しますが、基本的には表面が比較的滑らかなケント紙やアート紙などが適しています。
元々は、紙に描いた絵を陶器やガラスに転写し、絵付けするための技法でしたが、画家の
オスカードミングスという人がこの技法を絵画作品に取り入れました。
この画法は制作者の意図とは関係なく偶発性に委ねられることが特徴です。
その偶発性や無意識により現れたイメージは見る人の想像力を駆り立てます。
抽象画の世界で使われる技法です。
画家のオスカードミンクスは1935年ころから始めたシュルレアリズム絵画の技法の1つ
としてこの技法を取り入れた。岩や、花、水、雪、溶岩などを思わせるイメージが現れ
その後のシュルレアリストたちによって盛んに使われるようになりました。
おもしろい使い方では、生き物は大体、左右対称です。例えば蝶も左右対称であることから
画用紙半分に絵具で模様を描き、真ん中を折って、しっかりこすります。
それを開きますときれいな蝶の図柄ができます。